店舗の活動

Vol.53 デジタルも活用して感情を共有する

デジタルも活用して感情を共有する

人材育成インタビューに見る重要な視点

日経MJに掲載された結婚式場CRAZYの創業者、森山社長の「スタッフの人材育成についてのインタビュー」を紹介します。AI/ロボットが広がる時代に、逆張りともいえる「人が中心となって進めるファンづくり」について、重要な視点がいくつもありました。

「会社のパーパスを教えただけでは“そうですか”で終わってしまう」
「CRAZYは週1回開催のカルチャータイムで、社員同士でパーパスについて
コミュニケーションを深めている」
「どのように顧客と向き合うかなど、組織の中のイベントで自ら学べるようにしている」
「別のスタッフから質問され、答えていくことで、自分の心を見つめる経験ができ、新たな
気づきが生まれる。それをビジネスの現場に持ってくると、お客様から良い反応がもらえる」
「お客様からの良い反応を、自らの経験として“社内で共有”し、また現場に行く、という
繰り返しだ」
「CRAZYは、感情を扱うのが得意な人を採用していると言われるが、違う。
感情を扱うにも修行が必要で、基礎練習を社内でめちゃくちゃやっている」

日経MJ2023年10月25日号:SIS齋藤一部編集

今回は、森山社長がお話にもあった「社内の共有」に焦点を当てて、ご紹介します。
私たちはファンづくりのために、新しいファン層の開拓やSNS広告の展開、最新のツールの導入など、さまざまな取り組みを行っています。
しかし、それらの活動を成功させるためには、社内での情報共有が欠かせません。
社内には、ファンづくりに役立つ知見やノウハウがたくさんあります。
それらをもっと積極的に共有することで、社員同士の連携が強化され、ファンづくりの効果も高まります。
そこで、今回は、社内の共有を促進するための具体的な方法をお伝えします。

これからの社内共有

少なくなっている共有の機会

社内の共有は、ファンづくりにとって非常に重要な要素です。
しかし、コロナ渦では、ファンづくりに取り組むスタッフ同士が、実際に会って共有する機会がなくなりました。
コロナの感染拡大が収束した今、会うことは可能ですが、現場の人手不足やデジタルへの
慣れの問題など、さまざまな課題があります。
デジタルを活用した共有も、現場の慣れの問題もあり、あまり進んでいない状況もあります。

共有には大きく2つのテーマがある

ここであらためて、“共有”について、掘り下げてみたいと思います。
まず、社内の共有には、大きく分けて「1.情報の共有」と「2.感情の共有」の2つの側面があります。
「1.情報の共有」とは、売上や利益、KPIなど、目に見える数値や客観的なデータを共有することです。
これは、多くの企業で日常的に行われていると思います。
「2.感情の共有」とは、理念や心の構え、充実感やお客様の感動など、目に見えない感情
や価値観を共有することです。
これは、主観的で温度の高いものなので、共有するのが難しいと感じるかもしれません。

しかし、実は、「2.感情の共有」こそが、ファンづくりの効果を高めるために必要なのです。
なぜなら、「2.感情の共有」によって、社員同士の一体感やモチベーションが高まり、
お客様にもその熱意や想いが伝わるからです。
では、どうやって「2.感情の共有」を進めるのでしょうか?

一番良いのは、実際に会ってリアルで共有することです。
しかし、リアルには弱点があります。「即時性がない」ことです。
あらかじめ日程を設定して、認知を広めて、当日の会場を手配しなければなりません。
もう一つの弱点は、「共有範囲に限界がある」ことです。
例えば、一定規模以上の企業では、全社員をリアルな場に集めることは現実味がないでしょう。
店長レベルでも年2回が限界ですよね…。
そこで今よりも活用を広げるべきなのがデジタルです。

「2.感情の共有」をデジタルで進めることで、店舗・人・接客を軸にしたファンづくりが、
より効果的になると考えています。

A~Dの4つの具体的な展開を紹介

これから4つの展開を紹介いたします。多くの現場スタッフの方々に協力いただく内容は、
3か月に1回、取り組み事例(成功または失敗事例)を(Google)フォームに入力して
いただくことです。
入力にはおおよそ15分ほどかかる見込みですが、年間を通して考えるとわずか1時間の負担で
進めることができますので、ご安心ください。

A展開 日刊「ファンづくりNEWS」

TikTok的/ネットNEWS的な感じです。
毎朝、各店のパソコンまたは各社員のスマートフォンに、成功事例が届く仕組みをつくります。
スタッフから寄せられた事例から、本部でセレクトしてお届けします。個別の事例の方が
事例全体から言えることよりも印象に残ります。
毎日の新しい習慣として、1分で読めるまたは見られる量の動画や文字の形式を取り入れます。
特に、TikTokなどの短尺動画が流行しているため、動画もおすすめですね。
成功事例だけでなく、時折しくじり事例(失敗事例)も共有することで、気軽に参加でき、
同じ環境の仲間の成功やしくじりに触れることで感情が動いて、共有が深まります。
弊社が関わったである大手化粧品ブランドの事例では、スタッフに1ケ月に1つファンづくりの成功事例をGoogleフォームに入力してもらい、共有を進めた結果、ファン育成の
活動モチベーションの維持に効果がありました。

B展開 週刊「スタッフインタビュー」

YouTube的な感じです。
毎週1名の優れたファンづくりのスタッフに対してインタビューを行い、その模様を各店の
パソコンや各社員のスマートフォンにお届けします。
ZOOMなどのデジタルツールを利用して10分程度のインタビューで現場での活動やファンづくり
について深く追求します。
インタビューの内容は、ファンづくりでの重要なポイントや最近の成功事例/しくじり事例、
中心商品の売り方などです。
YouTubeのコンテンツでインタビューコンテンツは、とても多いですよね。
質問に答える表情、声のトーンが、見ている人の感情を動かすのでしょうね。

C展開 月刊「ファンづくりディスカッション」

人気TV番組(アメトーーク)的な感じです。
月1回、お題やテーマ(例: 「お客様を楽しませてファンになってもらうコツ」、「過去10年間
で100万円以上のお客様を育てる」)を設け、本部で参加するスタッフ(4~5名)を
決定します。
参加メンバーには事前アンケートを行い、それをもとにMCを設けて、参加者同士が自由に
ディスカッションを行います(約45分)。
人はそれぞれの感覚/感情で活動しています。スタッフそれぞれで、違う感覚/感情を持って活動しています。
同じテーマでも異なる視点からの答えを共有します。「客観的よりも主観的」を大事にしたコンテンツです。
芸人さんたちがテーマに基づいてディスカッションを行う「アメトーーク」のようなイメージです。

D展開 年間「ファンづくりノウハウDB(データベース)」

A展開で紹介される日刊「ファンづくりNEWS」で取り上げられた365件の事例を分類し、ノウハウDBに蓄積します。
このデータベースはいつでもどこでもアクセス可能で、従業員が事例を学び、成長する手助けとなります。
ありそうですが、一般的な企業ではなかなか実践されないアプローチです。
日々生まれるノウハウをデジタルツール(社内システムorアプリ)を活用して整理し、次なる成果に結びつけることができます。
これにより、自社のノウハウが感情とともに蓄積され、自社の自信に繋がっていくでしょう。

感情の共有を進めると…

A~D展開などの具体的手段を通じて、感情の共有を進めることができます。
店舗やエリアを超えて、働く人々のワクワク感を醸成し、ノウハウの共有を促進すると同時に、
競合他社との差別化を実現します。
デジタルを活用した新しい共有方法は、「スキルの隙間を埋める」「トップ販売員に
頼りすぎない」ことにも繋がっていきます。

今後、今よりもファンづくりを進めるにあたって、新しい知識を学ぶ「教育/研修」が必要ですが、その知識やノウハウは
AIやネットなどを活用して学ぶことも可能です。デジタルを駆使した「情報の共有」はますます容易になっています。

一方で「感情の共有」は、置き去りになりがちですが、店舗、従業員、そして接客を軸においた
ファンづくりを進める企業にとっては不可欠なポイントです。
デジタル活用により、これを広げる環境が整っています。
最新の知識やスキルを学ぶだけでなく、感情を共有し、育むことで、ファンづくりを進めていきましょう。

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