
今回は、前回に引き続き
ファンづくり・LTV向上をテーマにした最新事例をピックアップしながら、
事例の解説をしていきたいと思います。
「スターバックスコーヒー」「メルセデス・ベンツ」「ポーラ」の3事例をご紹介します。
スターバックスが続ける“毎日のフィードバック”の力
事例1. スターバックスコーヒー
スターバックスコーヒーでは、働くパートナーのエンゲージメント
(スタッフの自社・ブランドへの帰属度)を高めるために、
上の立場の人から下の立場の人への「コーチングフィードバック」を実施しています。実店舗では毎日(勤務日ごとに)フィードバックが行われています。
CEO・水口氏曰く、
「コーチングフィードバック」で大切なことは、
「相手に思いやりを持ちながら、きちんと威厳をもって言うべきことは言う。」「今の世の中は、そこをできるだけ避ける傾向にある。でも、お互いに信頼感が
しっかりあるところで言われるなら、万が一できていないことを指摘されたとしても、
うれしいことだと思う」「一生懸命逃げないで対応していく。そこには何のマジックもなくて、
出典:日経クロストレンド 2025.01.29
とにかく積み重ねることしかない。」
SIS齋藤の視点
Keyword : 人と真剣に向き合う、大事さ
「人と人が真摯に向き合う」ことは、とても大変なことですよね。
自分のプライベート(友人関係・家族関係・趣味の世界)な場面のふるまいを
振り返って考えると、その大変さが骨身に染みます…。
でも、それに比べるとビジネス(仕事)の場面では勇気は必要ですが、
目的・目標が明確にある分、進めやすいとも言えます。
例えば、店舗では
「このお店は、〇〇という目的・目標があります。そのためには…」
というような会話がしやすく、受け入れられやすいからです。
店舗ビジネスで、今よりもファンを増やし、LTVを最大化していくためには、
スタッフ一人ひとりの成長がカギ。
そのためには、リーダーと部下、スタッフ同士が
真摯に向き合って話すことが欠かせないでしょう。
私のクライアント先でも、現場リーダーからスタッフに向けて、
「共感・共震・共有」という軸で、コーチングを進めてもらっています。
今の時代、上下関係があっても“共に”という観点がますます重要です。
現場リーダーが共感、共震、共有の軸で、自己評価しながら改善を進めることで、
真摯に向き合う場面が増えてきています。
トップセールスが実践する、未来を見据えた顧客アプローチ
事例2. メルセデス・ベンツ
「メルセデス・ベンツ世田谷南」のトップセールス平井氏が相手にしている
のは、将来メルセデスを買ってくれそうな約500人。毎日そのリストを
眺めながら限られた時間の中で誰にどんなメッセージを取るのかを瞬時に
判断する。届けるメッセージの中身が魅力的でなければまったく相手の心に
響かない。メッセージの内容を考える上でポイントになるのが、5年後、10年後を
想像した仮説づくり。相手が思わず耳を傾けてしまうように、徹底的に顧客の
インサイトに寄り添った提案、具体的には車種とそれが適切な理由を仮説から
導き出す。例えば、何台も乗り継ぎ一人でドライブに行く傾向が強いお客様には、クーペ
出典:日経クロストレンド 2024.06.21
タイプのスポーツカーや大型SUVを経て、最後はBEVにたどり着くストーリーを描く。
営業合戦で勝つには、ライバルより少しでも先を見据えて、そして社会の変化を
敏感に読み取った前提条件に立って仮説を立てることが、なにより大切になる。
SIS齋藤の視点
Keyword : 自分のために時間を使ってくれた幸福感
平井さんの「未来の仮説づくり」と「その仮説をお客様に伝える」活動、
素晴らしいですよね。
トップセールスのファンづくりは、やはり
お客様を想うことから始まっていると改めて感じます。
今、いくつかのクライアント先で進めてもらっているのは、
顧客データ(購入履歴・接客メモ)を眺めながら、お客様に想いを馳せること。
1人のお客様について1分間考えます。たとえば…
「購入した商品を今も使っているかな?」
「この新商品で〇〇さんの生活は変わるかも…?」
そんな風に、1日5人、5分間をお客様のために使う。
1カ月(20日稼働)で、100人分の“想い”が生まれます。
そこで思い浮かんだことを、LINEやメールで伝えることで、ファンづくりを進めています。
そういうメッセージには、お客様から返信いただけることも多いです。
「自分が目の前にいない場所で、時間をかけて自分のことを想ってくれた」——
それが、お客様に幸福感を与えるのだと思います。
時間は、言い方を変えると“人生そのもの”だからですね。
想ってくれた内容が〇〇生活の充実を思ってくれてのことなら、なおさらです。 AIやロボットが同じ提案をしても、感心はするかもしれませんが、
“幸福感”を感じることはきっと少ないですよね… 。
ポーラがリアルチャネルに注力する真意
事例3. ポーラ
ポーラが業績ダウンに苦しむ中、オルビスをはじめECで成果を上げた
新社長小林氏が就任し、ポーラ社内では「リアルチャネルは縮小されるのでは…?」
という声も上がっていた。
ところが蓋を開けてみたら、
リアルな接客を中心とした既存顧客に手を打つべきとの判断だった。
なぜなら、リアルな接客がLTVに与える好影響が
全チャネルの中で最も高いことが分かっていたからだ。「リアルで長く信頼関係を築いてきた既存顧客の方が、
LTV視点ではより多くの利益を生み、収益に貢献している」(小林氏)今後強化していくのがエステを核とした価値提供。
出典:日経クロストレンド 2025.04.17
特にLTVの高い顧客層では、エステをきっかけに商品購入へとつながるケースが多く、
収益性が非常に高いという。
パーソナルな美容体験で顧客とのエンゲージメントをさらに向上させ、
トータルビューティー体験の再設計していく。
SIS齋藤の視点
Keyword : 常識が数値で証明できると再び強化に繋がる
化粧品ブランドの「LTV向上のためのエステ強化」は、私がファン育成・LTV最大化の世界に入った25年前にはすでに“常識”でした。
変化が激しい時代ですが、デジタル化が進んだ今も、変わらない真実があります。
それを数値で証明されたからこそ、ポーラは再強化に踏み切ったのだと
今回の記事を読んで解釈しました。
これまでの小林社長のインタビューから数値の判断をとても大事にする方だからです。
リアルビジネスのLTV最大化は、接客・エステといった、人と人が触れる
部分が肝になる、それが時代を超えた真実なのでしょう。
「3回来店すると固定客になる可能性が高い」も昔から言われていましたが、数値で証明されるケースが多いです。
数値の証明がないと、なにやら古臭い常識のように捉えられてしまうため
数値で証明されることはとても大事です。 実績数値、顧客アンケート結果などを用いて、従来の常識をあらためて数値で証明する。
数値で裏づけできる常識を持ち出すことで、現場に新しい風を送ることができるのです。