店舗の運営

Vol.45 接客の筋力

接客の筋力

「とんかつ新宿さぼてん」を中心に飲食事業を展開する「グリーンハウスグループ」がAIカメラを使って、顧客とスタッフの表情をチェックする取り組みを1年弱、20店舗で行いました。AIカメラ設置店では、営業時間中、常時AIが顧客とスタッフの表情を判別し続けて、年代・性別、リピーターか否かを集計しました。
その結果、以下の事実がわかりました。
「‘顧客の笑顔の数’と‘店舗の成長’は連動する」
「お客様の笑顔を引き出すのは、まずスタッフ自身が笑顔でおもてなしをする必要がある」

都内のあるテイクアウト専門店では、特定の時間帯になると、顧客の笑顔の数値が飛びぬけて上昇し、売上アップに繋がっていることが分かりました。
担当者が視察すると、顧客に寄り添うように接客するスタッフの姿がありました。
DXは「業務の効率化を促すDX」「付加価値を最大化するDX」の2方向があり、今回の取り組みは「付加価値を最大化するDX」に当たるとのことで、今後も強化していきたいとのことでした。
(出典:「実践!店舗DX」、日経、1,980円)

SISは、顧客育成をメインテーマに掲げています。
「業務の効率化を促すDX」を横目に、「付加価値を最大化するDX」に深く関わっていきたいと考えています。
特に、店舗ビジネスの顧客育成で、最も大事な「接客」をテーマに、今後さらに研究・実践していきたいと思っていたので、この「とんかつ新宿さぼてん」の事例は、気づきになりました。

よく接客研修で出てくる「メラビアンの法則(1971年にカリフォルニア大学の
心理学者であるアルバート・メラビアンが提唱した概念)」をご存知でしょうか。
メラビアンの法則という言葉は、覚えていないかもしれませんが、内容は記憶にあるかもしれませんね。

メラビアンの法則

感情や態度について矛盾したメッセージが発せられたとき
一番影響力が大きいのは見た目・表情・しぐさなど、目からの情報で、
全体の55%は視覚情報で判断している。
口調・声の大きさ・テンポなどの耳からの聴覚情報が38%。
話の内容などの言語情報は、人の印象を決定する要素の7%。
 (Wikipediaから齋藤要約)

接客教育は、メラビアンの法則を踏まえて「お客様の立場にたって、見た目を大事にしましょう!」とお伝えするのですが、普通はAIカメラを使った分析はしません。
私の研修でもしていません(笑)。「とんかつ新宿さぼてん」の事例を見て、「ITを使った教育後の定着アプローチ」の可能性を感じました。

先日、甲子園を目指す広島の武田高校野球部の練習風景をTVで見ていたのですが、ひとり一人の筋力(上腕筋の筋力・ふくらはぎの筋力・懸垂の回数)を定期的に(月2回)細かく測定して、それぞれの「筋力」をアップすることで、
140㎞のストレートを投げられるように、ピッチャーを指導していました。
選手も“筋力の数値変化を励みに努力”していました。
(参考→ 未来コトハジメ:高校野球の常識を覆す広島・武田高校の「フィジカル革命」
 https://project.nikkeibp.co.jp/mirakoto/atcl/sports/h_vol1/

「接客の筋力」は、どんな要素があるでしょうか。
「表情(顔)」「しぐさ(顔以外の姿勢・手の動き)」「トーク(話の内容・テンポ)」
「感情(スタッフの感情<共感・共振・共有>)」の4要素がまず挙げられるでしょう。
「表情認識」「しぐさ認識」「トーク認識」「感情認識」を測ることができれば、“自分の接客スキル向上の励み”になると思います。

(ミステリーショッパーも良いのですが、実施頻度が少ないので、スタッフの中には、励みにならない人もいますね)

接客は相手(お客様)が目の前にいて、それに対する反応が大事なので、正解が場面ごと変わります。
それが接客のAI・IT分析項目の設定の難しさに繋がるのですが、接客の『基礎スキル』と割り切れば、一定レベルで進められると思います。

EC(ネット通販)は、アクセス数、ページビュー、視聴ページの流れ、視聴時間など、AI・IT分析と相性が良く、SNSの投稿分析も、同様です。
それとは対象的に、接客はAI・IT分析と相性が悪いんですよね。

接客をテーマにした「付加価値を最大化するDX」をスムーズに進めるのは、
数年かかるかもしれませんが、クライアントさんと進めたいと思います。

接客は未来像永劫ずっと残り続ける!ので、中長期で取り組む価値はある、
そう考えています。

接客は、このような「店舗で人と接する幸せな時間」で大切な役を果たします。「人を幸せにする接客」は「ずっと残る接客」です。

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