顧客戦略の仕組みづくり

Vol.43 コロナ下でのB2Cビジネスの顧客戦略事例

コロナ下でのB2Cビジネスの顧客戦略事例

大都市の緊急事態宣言が解除されましたが、日本全体の日々の感染者数が減らない中で、店舗ビジネスへのコロナの影響は、続きそうですね…。
そんな状況を踏まえて、今回のメルマガでは、B2Cビジネスの顧客戦略(CX・CRM)の未来を考えるにあたって、企業のトップの声に耳を傾けてみたいと思います。

事例① ビームス「スタッフのスター化」

ビームス設楽社長曰く、「セレクトショップは、アイドルの劇場のようなものに
なるだろう。(店舗で働く)社員がインフルエンサー、スターになることで、個人のファンがたくさん付く。顧客は店舗スタッフに会いに来店する。
スターとコミュニケーションができる場所、店舗はそういう場になっていく」と
考えている。
(出典:日経MJ2021.03.14)

コロナ禍で店舗の存在について、いろいろな考え方が出てくる中で、「店舗に行く意味は、どこにあるのか?」「店舗に今いる人数は必要なのかな?」という疑問に対するビームスの答えが、「スタッフのスター化」だと思いました。

オタクの世界では、“推し(≒スター)”のために、お金を使う世界があります。
10年ぐらい前に話題になった、AKB48の総選挙で、“推し(≒スター)”の順位をあげるためにCDを沢山買って、投票する姿が話題になりましたね。
私の知り合いで、ジャーニーズのファン、刀剣乱舞のファンがいますが、自分が推しているアイドル・俳優のために、積極的にお金を使っています。
お金を使うことが、“推し(≒スター)”を応援することになるからです。

店舗にいるスタッフの個人的な感性が、商品・サービスの提案内容に反映される、「アパレル」「自動車・バイク」「釣り具」「美容室」「メガネ店」「ジュエリーショップ」などではスタッフにとって、自分自身のスター化は、目指すべき一つの姿だと思います。
お客様は、スターに会いに行くために、お店を訪れる世界です。
そこでお金を使うことが、自分自身の最適なお買い物になることはもちろん、スタッフさんを「応援すること(推すこと)」にもなっています。

AKB48は、秋葉原の劇場で、スターの卵に会えることが価値でした。
それと似た状況を作ることで、店舗・スタッフの存在価値は大きくなります。

スターというと、ハードルが高く感じますが、スターは、言い換えると「人気者」です。
“人”の“気”を揺さぶる人です。“人(お客様)”の“気持ち”を動かせる人です。
大きく分けて、3つのタイプがいると思います。

タイプ1.お客様から“尊敬の気持ち”を抱いてもらって、スター(人気者)になる人。

→お客様から「いろいろ知っていて、すごいなあ~」と思われるスタッフさん

タイプ2.お客様に“親しみ”を感じてもらって、スター(人気者)になる人。

→お客様から「会って話すと、ホっとするなあ♪」と思われるスタッフさん

タイプ3.お客様から可愛がられて、スター(人気者)になる人

→お客様から「いつも一生懸命で、何か手助けしてあげたいなあ」と思われるスタッフさん

芸能人のスターには、さまざまなタイプがいますが(例えば古くてすいません…笑。松田聖子さんと中森明菜さんはタイプが違いますよね)、スタッフにもいろいろなタイプのスターがいることで、いろいろなお客様から、「このお店には、自分のスターがいる」という状況を作りやすくなります。

ひと昔前に、渋谷109のカリスマ店員が注目されましたが、それは「タイプ1」ですね。
カリスマタイプのスターだけでは、「固定客に育てることができるお客様の数」が一定数で留まってしまいます。
さまざまなお客様が来店する店舗では、さまざまなスタッフ(≒スター)が必要で、それによって固定客の育成、顧客戦略が、企業として、店舗として、進みやすくなります。

今後、ECが伸びる中で、店舗の存在意義を高めるためには、さまざまなタイプのスターを育てることが必要で、そのためには、普通のスタッフがスターの道へと歩みを進められるように、企業として「オリジナルの教育プログラムの実施」「成功事例の共有」「スタッフがSNSに取り組める環境づくり」など、支援することが大切になるでしょう。

事例② 無印良品「土着化で店舗数を今の6倍に」

良品計画の金井会長曰く、「日本・世界の津々浦々で“感じ良い暮らし”を提供していきたい。どこよりも誠実で倫理的に配慮した品質や衣料品、生活雑貨を
うれしい価格で提供したい。」
「今、国内で約500店舗を展開しているが、長い目で見ると6倍の3000店舗まで増やしたい」
「各店舗が“土着化”し、産・学・行政・市民がどういう街を作っていくかということに巻き込まれながら、社会に役立つようなインパクトを与えていきたい」と考えている。
(出典:日経MJ2021.03.12)

まずこの記事を読んで思ったのが、これから日本の少子高齢化が本格化する中で、店舗を大幅に拡大を構想していこうという気概を持っていることに、感銘を受けました。
資本主義的に成長が大事ということ以前に、自分が属する組織が上を目指していこうとしていることに、(大変だと思いつつも…)心のどこかに嬉しさを感じる所があるように思います。また「土着化」というコンセプトも印象的でした。

ECになくて店舗にあるもの、それは「地域」という概念です。
今まで小売チェーンは「地域密着」という表現で、地域に合わせた展開を進めてきました。地域にあった「品揃え」「価格」「競合店対応」という視点の実践です。
「地域密着」の根底にあるには、「各地域にある店舗で、その年の年間の売上を
最大化する」ことをゴールにしていたと思います。

そんななかで、無印が掲げた「土着化」という言葉は、未来を感じる言葉でした。

土着とは辞書によると、「文化などがその土地にすっかり根付くさま」を言います。店舗ビジネスの土着は、「ずっとお店がこの場所(立地)に根付いていく、(良い意味で)埋没していく、溶けていく。多くの住民から愛されていく。例えば、撤退するという噂が流れたら、多くの住民が反対を表明してくれる状況」と捉えることができるのではないでしょうか。

「店舗ビジネスの土着化」は、独立店として地域で経営しているならば、自然にその道を指向しますが、通常、チェーン店は、利益が上がらなければ、撤退すれば良い訳で、「土着化までは…」いうのが、一般的な考え方だと思います。

これからECが伸びるなかで、店舗は「地域密着」から、さらにもう一歩二歩と進んだ「土着化」に進む必要性を感じました。
「土着化」は、「地域にあったMD」「地域住民への宅配」「地域活動への支援」を進めながら、「人(地域住民・顧客)との繋がり」も大事なピースになるでしょう。
今後の無印良品が土着化を進めるにあたって、「顧客戦略=顧客一人ひとりの体験の価値を向上させて、顧客との関わりを深め、固定客の数を増やしていく戦略」の完成度アップが求められると思います。
チェーン展開している企業が、店舗の土着化を思考した時に、顧客戦略は重要な役割を担うと考えています。

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