顧客戦略の基本

Vol.59 LTVを伸ばす鍵─ファンづくり3事例を解説!

LTVを伸ばす鍵は”人とのつながり”今注目のファンづくり3事例を解説!

今回は、ファンづくり、LTV向上をテーマにした最新事例を
日経クロストレンドからピックアップしながら(編集:SIS齋藤)、私の視点で
事例を解説していきたいと思います。

「セフォラ」「パリミキ」「ビームス」の3事例をご紹介します。

セフォラに学ぶ、「人が最後に選ばれる」時代のファン戦略とは?

事例1. セフォラ

フランスの大手化粧品チェーン「セフォラ」では、過去の購入履歴や
閲覧履歴に基づいたパーソナライゼーションや、AIによるレビューの
要約など、さまざまなデジタル技術を駆使しているが、CEOのパトロック氏曰く、
ビューティーアドバイザー(スタッフ)がお客様にメーキャップを提供する
名物サービス「Beauty Studio(ビューティー・スタジオ)」などを通じて、
「技術やデータを“人間的なつながり”に結び付けることが長期的に
成功する秘訣だ。(メーキャップなどの)体験の先にある“かけがえのない
存在”になることが必要になっている」と話している。

出典:日経クロストレンド 2025.02.17

SIS齋藤の視点

Keyword : やっぱりファンづくりの重点ポイントは“人と人”

化粧品小売チェーンのデジタル化の最先端を行くセフォラでも、最終的には
人と人がつながることを勘所にしているのが興味深いですよね。

接客が起点の化粧品ビジネス(言い換えるとお客様との関与度の高い
リアルビジネス)のファンづくりは、人(お客様)と人(スタッフ)の関係性から
生まれやすいです。

長年化粧品ビジネスをサポートさせていただき、実感として分かります。
逆にネット専業通販でそのような関係を作るのは、大変だと思います。
(ネット専業通販でファンづくりに取り組む人たちには、本当に頭が下がります)

ネット専業通販を競合と見据えた場合ですが、競合が実施することが
難しい、自社がやりやすいことに注力することは、時代を超えた戦略の王道です。

デジタル社会が進めば進むほどに、リアルで人と会う機会が
特別になります。そして、お客様の心を動かしやすくなります。
そんな場面に、人は飢えているからです。

「AI・デジタルツールで、そのお客様(グループ)に合ったパーソナライゼーション
された情報を届けて、AI・ロボットで業務を効率化して、人がファンづくりで
最も大事な心のつながりを感じる対応を進める」ことが、リアルビジネスのファンづくり/
LTV最大化の現段階の一つの答えでしょう。

売上主義から顧客主義へ─パリミキがV字回復した理由

事例2. パリミキ

眼鏡チェーンのパリミキがNPS(ネット・プロモーター・スコア)を活用した
顧客体験(CX)の改革で、V字回復している。
業績低迷の要因だったのが、“売上第一主義”の文化が根付いていた
からだと捉えて、NPSをKPIにして、売上の優先順位を下げた。
「店舗はパリミキの顧客体験の根幹。NPSを基に改善し、店舗の体験を
高めることが長期的な成長につながると考えた」
「顧客はよく見える、軽くて負担の少ない自分に合う眼鏡を探している。
当社の利益や売上とは無関係」(パリミキ代表取締役社長 恒吉氏)。
実際の現場改善は、NPSが低い店舗のボトムアップから始めて、
「出迎え」「挨拶」「応対」など6つの項目で接客の基準となる「パリミキ基準」を
設定し、それをクリアすることで、顧客体験の全体的な底上げを図り、増収増益で
業績を回復している。

出典:日経クロストレンド 2024.12.17

SIS齋藤の視点

Keyword : 文化醸成=コミュニケーションの量

「売上第一“主義=文化”」から「顧客第一“主義=文化”」に変えていくのは、
正直大変だったと思います。

そのための手段として、パリミキはNPSという評価基準を使いました。
評価基準を変えることはもちろん大事で、この成功事例のキーなんですが、
ここでは少し視野を大きく捉えてみたいと思います。

実際、評価基準を変えただけでは現場の実態は変わらないことが多いからです。

そもそも“文化=主義”とはどんな事実から醸成されるのでしょうか。
私は文化は社内・店内の「情報量=コミュニケーション量」から醸成されると考えています。

顧客第一のコミュニケーション量が社内・店内で多ければ、顧客第一の“文化=主義”になりますし、売上第一のコミュニケーション量が社内・店内で多ければ、売上第一の“文化=主義”になるというシンプルな事実です。

顧客第一“文化”を培っていくためには、社員の意識をどうするかよりも、コミュニケーション
の量をどうするかに着目した方がいいでしょう。

文化を変えるのは難しいと言われますが、「コミュニケーションの量という事実に焦点を当てれば、文化を徐々に変えることは、それほど難しくない」と考えています。

今、顧客第一のコミュニケーション量がある店舗内で、10分だったら20分にすれば、文化は
徐々に変わっていくからです。

今回のパリミキの成功要因は、NPSを導入したからというよりは、NPSを切り口に、顧客第一“文化”が醸成されるコミュニケーション量が社内・店内で以前よりも増えたから…と捉えました。

ということは、必ずしもNPSでなくても良くなりますね。理念、パーパス、クレドでも良いわけです。

ただ、お客様の意見など、自社と離れた客観的な数値の裏付けが求められる場合は、NPSが
第一候補として考えられるでしょう。

1日2~3人でできるLTV戦略─ビームス流“デジタル接客”の力

事例3. ビームス

ビームスの店舗では「試着する」「スタッフとコミュニケーションを取る」などの接点が増えると、
LTVが高まることが分かっている。
同様にデジタル上でもスタッフと顧客の接点を増やすことがLTVを向上させる上で重要と考えて、
LINE公式アカウントの他に、店舗スタッフのうち115人がそれぞれLINEアカウントを持ち、
顧客とコミュニケーションしている。
例えばスタッフが気になるアイテムとして商品を紹介するメッセージを送ったり、
逆に顧客側から紹介した商品のコーディネートについて、相談が寄せられる。
BEAMS CLUBのIDとLINEが連携すると、「購入したアイテムのスタイリング」、
お気に入りやECサイトの閲覧状況に基づく「価格が下がったアイテム」、
「在庫が少なくなったアイテム」の案内がLINEで届くようになる。
「価格が下がったアイテム」「在庫が少なくなったアイテム」の案内は、
高確率で購入に結び付いている。

出典:日経クロストレンド 2025.02.10

SIS齋藤の視点

Keyword : デジタル個別連絡。1日2~3人に実践でLTV最大化へ

「価格が下がったアイテム」「在庫が少なくなったアイテム」の案内は、
「1対多のデジタルマーケティング」ですね。

一方で「スタッフが気になるアイテムの紹介」「個客からの相談へのアドバイス」
は「1対1のデジタル個別連絡」です。

「1対多のデジタルマーケティング」と「1対1のデジタル個別アプローチ」は、
ファンづくり/LTV最大化に共に必要ですが、購入金額と単価が上がれば
上がるほどに、あるお客様のファン育成が進めば進むほどに、
「1対1のデジタル個別連絡」の重要性が増していくことが多いです。

「1対多のデジタルマーケティング」は、MA(マーケティング・オートメーション)で
推進しつつ、「1対1のデジタル個別連絡」でLTVを最大化していきます。

業種・業態によりますが、1スタッフあたり、1日2~3人に「1対1のデジタル個別連絡」
ができれば、20日稼働で毎月約50名のお客様にメッセージを送ることができます。

6名スタッフがいれば、上位顧客約300名に「1対1のデジタル個別連絡」を、
月1回実践できます。

「1対1のデジタル個別連絡なんて、忙しいから進められない…」と
言って諦めてしまうと、LTVが最大化しません。

1スタッフあたり1日2~3人の「1対1のデジタル個別連絡」は、現実的な実践量です。

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