特集記事

顧客戦略の現場GPDCの一工夫

顧客戦略の現場GPDCの一工夫

顧客戦略の進める上で、顧客接点は重要です。ここには2つの側面があります。

「顧客接点でどんな活動をするのか」と「顧客接点でどのように現場を動かしていくのか」の2つです。「顧客接点でどんな活動をするのか」については、「特集記事:店舗ビジネスの顧客育成活動(CRM活動)」「特集記事:顧客接点の活動 基本4テーマ」でお話しました。

今回は「顧客接点でどのように現場を廻していくのか」についてお話します。①目標設定、②計画作成、③現場実践、④振り返りの4つの視点になります。今回の特集記事では、そんな場面でのちょっとした思考の工夫について、いくつか紹介します。

1.目標設定(Goal)

目標は達成しなければならないノルマというよりは、顧客接点の努力がどれだけお客様に届けているかはかる尺度と考えます。顧客接点が辿り着きたい場所です。

 顧客戦略の進める上で、顧客接点は重要です。ここには2つの側面があります。
「顧客接点でどんな活動をするのか」と「顧客接点でどのように現場を動かしていくのか」の2つです。「顧客接点でどんな活動をするのか」については、「特集記事:店舗ビジネスの顧客育成活動(CRM活動))」「特集記事:顧客接点の活動 基本4テーマ」でお話しました。
 今回は「顧客接点でどのように現場を廻していくのか」についてお話します。①目標設定、②計画作成、③現場実践、④振り返りの4つの視点になります。今回の特集記事では、そんな場面でのちょっとした思考の工夫について、いくつか紹介します。

1-1.売上を「お客様のハッピーの量」を考える

2つの売上の考え方、あなたはどっち派?

 「売上」には、2つの考え方があります。1つ目は「客数×客単価」、2つ目は「お客様のハッピー(喜び・幸せ・お得感)の量」という考え方です。

お客様は、どのお店でも商品を買える自由がある。

 ここで考えて欲しいのが、今いるお客様は、皆さんのお店だけではなく、どのお店でも、ネット通販でも、商品を買うことができたことです。
 それなのに、皆さんのお店で商品を買っているのは、他のお店で買うよりも、皆さんのお店で商品を買う方が、喜びが大きい・幸せな気分になれる、お得感、つまり、ハッピーになれるから、買っているのです。(皆さんも一人のお客様として考えると、納得いただけると思います。「なぜ私はあのお店で何年も買っているのかな?」と考えてみましょう。)。
 そのように考えると、売上は、「お客様のハッピー(喜び・幸せ・お得感)の量」と考えた方が、より現実に近い姿でしょう。
客数は「商品を買ってくれた人数」、客単価は「商品の金額」なので、とても大切なことですが、売上と同じ結果であって、本当の意味の現実からは少し距離があります。

売上をアップしよう!と思った時に、発想の出発点が変わる。

 売上を今より5%アップしようと思った時に、売上を「客数×客単価」だけで捉えていると、商品がベースになりすぎて、どうしてもお店視点=「どの商品をあと5%売ろうか?、単価をあと5%アップするには?」になります。売上を「お客様のハッピーの量」と考えれば、お客様視点=「お客様にあと5%喜んでもらうには、明日から何をしようかな?、あと5%幸せな気分になってもらうには、来週から〇〇な接客をしよう、〇〇な売場を作ろう、〇〇なイベントをやってみよう!」と考えることができます。

売上のことを考えると、お客様の喜んだ姿が思い浮かぶ。

 売上を考える時に、「客数×客単価」を3割、「お客様のハッピーの量」を7割で、日々考えていきましょう。売上のことを考えた時、お客様が喜んでいる姿が、お客様が幸せな気分になっている姿が思い浮んできたら、この考え方が、心に根付きはじめてきた証拠です。

1-2.「3年後」「半年「今月」の時間軸で未来を整理する

時間が違うと、頭の中がゴチャゴチャしてしまう。

 なぜ、将来の夢と毎日の活動は、頭の中でゴチャゴチャしてしまうのでしょうか。この2つは、考えている時間が違うからです。
 例えば、同じ価値観、同じ目標、同じ将来を共有している2人がいたとします。無意識にAさんは1年後を、Bさんは3ヵ月後を想定して話していると、中々話がかみ合いません。

お店では「3年後」「半年後」「今月」の3つが大事になる。 

 お店では、「3年後」「半年間」「今月」の3つの時間を考えることが大事です。
 「3年後」の未来を持つこと(3年後どんな風になっていたいですか?)、「半年間」の活動カレンダーを計画すること(半年間どんな活動をしたいですか?)、「今月」の活動を丁寧に実践すること(今月、どんな活動をしたいですか?)の3つが大事になります。

3つを一本の線で繋げて考える。 

 この3つは、一つ一つ別々で考えるのではなく、一本の線で繋げて考えていきます。
 「3年後」の未来像を持ち、その実現のために「半年間」の活動カレンダーを計画し、活動カレンダーをベースに「今月」の活動を実践することをイメージして考えます。
 「3年後」「半年間」「今月」を、一本の線で繋げて考えることができると、頭の中が整理整頓されます。

頭が整理整頓されると、日々落ち着いて活動できる!

 頭が整理整頓されると、あせらないで落ち着いて、一番大切な「今月」の活動(=日々の活動)を丁寧に実践することができます。お客様にとっては、「3年後」「半年間」は、関係がありません。「今月」の活動が丁寧に実践されているかが唯一大事です。
 そういう意味で、「3年後」「半年間」は、「今月」をあせらないで落ち着いて実践するために必要な道具と捉えることもできます。ただ、これがないと、「今月」の活動に落ち着いて取り組めないので、お客様の幸せが減ってしまいます。「3年後」「半年間」「今月」は、切っても切れない関係にあるのです。


2.計画作成(Plan)

 今ある顧客接点は、一定レベルをクリアしています。その中で一歩抜け出すためには、完成度の高い活動が必要です。そのために、活動計画は顧客接点の要(かなめ)です。

2-1.「新しい出会い」「関係を深める」「特別な心遣い」で計画

3つのお客様の数、それぞれを増やすことが大事。

 お客様は大きく3つに分けることができます。
 1つ目が「新しいお客様(=新規顧客)」、2つ目が「中くらいのお客様(=再購入客)」、3つ目が「継続的に購入しているお客様(=固定客)」です。
安定的にお客様を増やし続けるためには、3つのお客様それぞれを、増やし続ける必要があります。

お客様を絞ると、安定的にお客様全体の数が増えない。

 3つのお客様の内、どれかのお客様を増やすことに集中すると、お客様の数は増えません。
 新しいお客様を増やすことに集中すると、中くらいのお客様と固定客が増えません。中くらいのお客様を増やすことに集中すると、新しいお客様と固定客が増えません。固定客を増やすことに集中すると、新しいお客様と中くらいのお客様が増えないからです。

3つのお客様をそれぞれ増やす、3つの活動が大切になる。

 では、具体的に、3つのお客様、それぞれを増やすには、どうすればいいのでしょうか?
 新しいお客様を増やす「新しい出会いの活動」、中くらいのお客様を増やす「関係を深める活動」、固定客を増やす「特別な心遣いの活動」の3つの活動を、半年間を一つの期間と考えて、それぞれバランスを取りながら、丁寧に計画することが大切です。

3つの活動のバランスが取る。

 「今度のDMは、売りを重視しようか、お客様との親近感を訴求しようか?」「接客において、テクニックが大事なのか、心構えが大事なのか?」、今回のテーマである「新しいお客様を獲得するのか、固定客から売上を獲得するのか」、2者択一のように、店長とスタッフが、スタッフ同士でコミュニケーションが交わされることがあります。
 話を分かりやすくするという意味で、どちらか一方に軍配を上げたい気持ちは分かりますが、多くの場合、両方とも大事です。そのバランスをどう取るのか、最も丁寧に考えるべきことです。
 お客様の数を増やしていくのも同じです。
 「新しいお客様(=新規顧客)」「中くらいのお客様(=再購入客)」「継続的に購入しているお客様(=固定客)」をバランスよく増やしていくことが大事です。それには、活動に偏りが出ないように、3つの活動をバランスよく計画し、実践することが大事です。

2-2.「私がお客様だったら」と立場を変えて計画する

売るためのお客様視点は、本当のお客様視点と違う。

 日頃から、活動を計画する時に、「お客様視点」を意識していると思います。耳にタコができるぐらい、聞くことも多いでしょう。
 ただ、普通にお客様の視点で考えると、「どうすれば、お客さん、この商品を買ってくれるかな…」「どんなトークをすれば、お客さんはこの商品を魅力的に思ってくれるかな…」と考えていませんか?
 これは、売るためのお客様視点です。
 お客様視点で考えること自体は素晴らしいことですが、本当のお客様視点ではありません。お客様のことを考えていますが、立場がお店側だからです。
 習慣というのは、恐ろしいもので、お客様を心から大切に思っている店長・スタッフが全員集まった会議でさえ、売るためのお客様視点で考えてしまうことがあります。

本当のお客様視点は、「自分のお店のお客様だったら…」と考える。

 本当のお客様視点は、「もし私が“自分のお店のお客様”だったら…」と考えることです。日頃から、活動を計画する時に、自分の立場を、お店ではなく、お客様に移してしまいます。それによって、お客様が喜ぶ、嬉しくなる活動が生まれる可能性が大きく高まります。
 「本当のお客様視点」で考えることは、とても楽しいことです。自分がお客様だったらしてほしい、嬉しいと感じることを素直に考えればいいからです。売ることはとりあえず、脇に置きます。
 スタッフの中には、お客様としてお店に来ていて、自分が気に入っているお店で働きたいと思い、スタッフになった人もいるでしょう。その場合、自分がお客様だった時に、立ち返って考えてもらえばいいのです。

優秀な売り手は、理解まで少し時間がかかる。

 売上目標に対して意識が高いスタッフ、売上目標をクリアしているスタッフの中には、「本当のお客様視点」という考え方になじめない、共感できない、腑に落ちない人もいます。なぜなら優秀な売り手だからです。
 店長の皆さんには、そんなスタッフを、時間をかけて見てあげて欲しいと思います。優秀なスタッフは、3ヵ月~半年ぐらいで「本当のお客様視点」が大切なことを納得してくれることが多いからです。皆さんの心強い味方になってくれることはもちろん、スタッフ自身にとっても大きな飛躍となるでしょう。

2-3.計画を立てる前に仕事を仕分けしてやめる活動はやめる

新しい活動(計画)は。現場をパンクさせてしまう。

 多くのお店では、新しい活動に取り組む場合、現在の活動をそのままに、プラスアルファで、新しい活動を実践しようとします。
 そうなると、時間がない中で実施するので新しい活動が中途半端に終わってしまいます。その取り組みがうまくいったのか、うまくいかなかったのかも分からないために、次に繋がりません。

現在の活動を仕分けしてみる。

 働く時間は、無限にある訳ではないので、新しい活動をするには、その分、時間を創り出す必要があります。そのために必要になることがあるのが、 「現在の活動の仕分け作業」です。3つのステップで現在の活動を仕分けします。
・STEP1:現在、実施している全ての活動を、思い浮かべて、リストアップしてみる。
・STEP2:今の活動状況を4つの基準(◎お客様にとても喜んでもらっている、○大体のお客様に喜んでもらっている、△あまり喜んでもらっていない、×殆ど効果が感じられない)で評価してみる。
・STEP3:活動ごとに、これからどうするか、結論(継続 or 改善 or 削減)を出す。
 仕分けによって、活動が少なくなるので、時間に余裕が生まれます。その時間を使って、新しい活動を丁寧に実践します。

社内の活動も仕分けしてみる。

 活動の仕分けは、お客様に向けた活動を基本に考えますが、お店内の社内業務もスタッフからみたら、もちろん活動です。この社内の活動の仕分けも合わせて、実施してもいいでしょう。
 社内の活動はできるだけ少なくすることが基本です。社内の活動が多い会社は、強制的に減らすことをおすすめします。一般的には、売上との関係が薄い社内活動は、半分くらい減らしても、大きな影響がありません。
 社内の活動をスリム化すると、スタッフが自分達のことを考えてくれていると感じ、お客様に向けた活動への積極的な取り組み、やる気アップに繋がります。


3.現場実践(Do)

 お客様にとって、顧客接点が届ける活動がすべてです。お店の目標も活動の計画のお客様のは関係がありません。活動の実践は「お店の姿(姿)」そのものです

3-1.完璧主義ではなく、いい加減で考えながら実践していく

 計画するのは簡単。活動するのはやっぱり大変ですよね。

 計画するのは、けっこう簡単です。紙に書けばいいのですから…。しかし、実際にこれを活動に移すのは、本当に大変です。
なので、計画した活動が完璧できていなくても、必要以上に気にする必要はありません。現場の現実を思い浮かべると、計画通りいく方が珍しいのではないでしょうか?
 現場では、お客様から急な対応を求められたり、スタッフが急に辞めたり、本部からいきなり報告書の提出を求められたりと、いろいろなことがあります。現場の第一線であるお店は、社内事情が中心の工場の生産部門、経理等の定型業務と大きく違います。

“いい加減”で、いきましょう!

 計画した活動ができなかった時に一番まずいのは、活動できなかったことに落ちこんでしまって、計画した多くの活動が滞ってしまうことです。完璧主義からくる“あせり”は禁物です。
“いい加減”でいきましょう。
 一般的に使われる、“いい加減”という意味ではなく、良い意味で、“いい加減”を想像してください。お風呂の湯の温度をあらわす時に熱すぎてもいけないし、冷めすぎてもいけない。丁度よいお湯の温度のことを、“いい湯加減”と言い、良い意味で“いい加減”を使っています。
 人の人生と同じで、お店の人生も長いのですから。
 今月の活動が計画通りいかなくても、先週の活動が計画通りいかなくても、昨日の活動が計画通りいかなくても、来月も、来週も、あります。

頻繁な計画変更のススメ

 ただ、計画通りいかなった活動をそのままにしていたら、お客様に向けた活動の量が減ってしまうので、お客様のハッピーの量である売上が下がってしまいます。
 そこで、お勧めしたいのが、頻繁な計画変更です。
計画通り進められない自分を責めるのではなく、最終ゴールは変えずに、ドンドン計画を変更していきます。そうすると、また活動を実践したい気持ちが蘇ってきます。
 計画通りいかなったことは、早く忘れて、計画を変更して、変えることができる未来に向けて、前向きに進んでいきましょう。

3-2.今よりも活動を頑張ると、3つのハッピーが増えると心に決める

頑張ることに疲れてしまう、それはよくあること。

 活動を頑張ることに疲れてしまう時、あると思います。一生懸命、働いている人で、こういう気持ちになったことがない人は稀でしょう。むしろ定期的になるのが普通かも知れません(人によって、毎月なる人、3ヵ月に1回なる人、半年に1回なる人はいますが…)。

今よりも活動を頑張ると、3つのハッピーが増える 

 では、なぜ活動を頑張ることに疲れてしまうのでしょうか。
 それは、活動を頑張る意味が分からなくなるからです。人は自分が意味を見出せないことに、頑張ることはできません。
 活動を頑張ると、3つのハッピーが増えます。3つのハッピーが増えることに、活動を頑張る意味があります。

3つのハッピーとは、具体的にどんなハッピーなのか? 

 では具体的に、活動を頑張ることで、増える3つのハッピーとは、どんなハッピーなのでしょうか?


① お客様のハッピーが増える
 お客様は、お店が一生懸命頑張って活動を実践すれば、その分だけ、自分のことを大切に思ってくれていると感じます。嬉しい気分になり、ハッピーが増えます。


② 働いている私達のハッピーが増える
 一生懸命頑張って活動を実践すると、お客様が嬉しい気分になり、それを感じた私達も嬉しい気分になります。ハッピーが増えます。


③お店のハッピーが増える
 お客様が嬉しい場面が増えれば、売上が上がり、ハッピーが増えます。

“3つハッピーが増える”と「心に決める」ことが大事。 

 正直な所、活動を頑張っても、3つのハッピーが増えない時もあるでしょう。実際にそういうこと、よくありますよね。それでも、「活動を頑張れば、3つのハッピーが増える」と心に決めてしまいます。それが大事です。決めてしまえば、活動を頑張ることに、集中できるからです。
 心をスッキリさせて、活動を頑張れば、3つのハッピーに繋がる可能性が高まります。少し、精神論的に寄ってしまいましたが、それが真実です。

3-3.一手間加えなかったことで、残念に思うお客様を考えて実践する

お客様一人ひとりに一手間加える活動の取り組み

 お客様一人ひとりに一手間加える活動は、たくさんありますが、話をシンプルにするために、一番典型的な活動である、DM・レターに手書きの一言コメントを加える活動をテーマにして、話しを進めていきます。
 DM・レターに手書きの一言コメントを加える活動の取り組みは、お店によって大きく3つに分かれます。レベル1は一言コメントを書かないお店、レベル2は全員に全て同じコメントを書くお店、レベル3は顧客ランク上位3割~5割のお客様に一人ひとり違うコメントを書くお店です。

反響が良いことは分かっている・・・でも面倒。

 今ご紹介した3つの活動では、レベル3まで実施した方が反響が一番いいです。それを分かっていながらも実施しないことがあります。
 お客様の数・スタッフの数が、業種・業態・規模によって違い、時間的に足りない等、いろいろ要因があり、なんとも言えない所はありますが、やはり一手間加えることが正直、面倒なのでしょう(その気持ちよく分かります…)。

お店の範囲で考えると実施しなくていいかも知れません。

 一手間加えない理由として、「今回は来店プレゼントがいいから、一言加えなくても大丈夫じゃないか」とか、「とにかく今回は時間がないから一律のメッセージだけですぐ発送することを優先しよう」いったことがよく言われます。実際、一時的な業績・スタッフのライフワークバランスといったお店内部のことのみを考えると、それでいいのかも知れません。
 しかし、一手間加えないDMを受け取った、お店の外部にいるお客様は、どう思うでしょうか。「この前、来店したばかりだけど、何もそのことに触れていないので、少し寂しいな…」」「いつも暖かい一言が加えてあったのになあ…」と、残念な気持ちになるでしょう。

残念に思うお客様の気持ちを想像してみる

 お客様一人ひとりに一手間を加える活動は、お店内部のことだけ考えていると、時間に余裕があった時にやろうとなりがちですが、実際に余裕がある時なんてないのですよね。
 しかし、お店の外部にいるお客様を想像すれば、特に、お客様がお店から大切にされなかった場面、残念に思った場面を想像すれば、お客様一人ひとりに一手間加える活動は、実施される場合が多くなります。そうすれば、中長期で来店いただけるお客様の人数も今よりも増えるでしょう。


4.振り返り(Communication)

 お店の現場はずっと動き続けています。立ち止まることがありません。時々、立ち止まって静かに考えることが大事です。活動の振り返りはお店の源(みなもと)です。

4-1.うまくいった活動について丁寧に振り返っていく

実践した活動を、大きく3つに分ける。

 実践した活動を振り返る時、まず大切なのは、①うまくいった活動(=お客様の心に届いた活動・反響がよかった活動)、②まあまあだった活動、③今一つだった活動の3つに分けることです。

実践した活動を3つに分ける理由

 3つに分ける理由は、明らかです。3つに分けておかないと、自然に③今一つだった活動に振り返りのテーマが集中し、振り返りが反省会になってしまうからです。これは、私も含めて反省好きな日本人の癖なのでしょう。
 それでは、バランスが悪い振り返りになってしまいます。

うまくいった活動を中心に振り返る。

 ①うまくいった活動、②まあまあだった活動、③今一つだった活動の全てをバランス良く振り返ることが大事です。①が6割、②が2割、③が2割と、時間の割合まで意識します。
 割合まで意識しないと、いつのまにか、①が1割、②が2割、③が7割になってしまうからです。これでは、振り返りは、暗いものになり、明日から、来月からの元気に繋がりません。元気に繋がらない振り返りは、自然と実施されなくなるか、ルーチンとして実施しているだけになります。

うまくいった活動の理由を丁寧に考える。

 うまくいった活動は、その理由をお客様の視点で丁寧に考えることが大事です。例えば、入口前の看板について、お客様の反応がよかった場合、「どうして、今回の看板、お客様はよく見ていたんだろう?」とお客様に立場を変えて、丁寧に考えてみます。お客様の視点で理由が明らかになれば、明日から、来月からの様々な活動を実施する際に、参考になるからです。
 お客様に視点で振り返ることは、普段慣れていないので、最初は少し難しいですが、うまくいった活動について、お客様の気持ちを推理することは、とても楽しいことです。是非、多くのスタッフと一緒に実施しましょう

単なるプラス思考とは違います。

 今回ご紹介した考え方は、プラス思考(=ポジティブシンキング)の一つだと思いますが、「すべての出来事を前向きに捉える」という方法ではなく、バランスよく考えようとする取り組みです。「地に足がついた、プラス思考」です。。

4-2.活動をいつくか分けて振り返る

うまくいかない理由が分からない。

あるテーマ(セール・接客・売場等)について、「今よりお客様に喜んでもらうには、どうすればいいのか、今一つ分からないな~」と思った時、どんな風に考えればいいのでしょうか。

●セールをテーマに考えてみると…
 セールは大きく、①集客、②当日、③フォローの3つに分けられます。
さらに、①集客は「事前告知」「本格告知」「最終告知」に分けられ、②当日は「接客」「売場」「ツール」に分けられ、③フォローは「直後フォロー」「継続フォロー」に分けられます。それぞれについて、考えていくことが、うまく行かない理由を解明するために大事です。
●接客をテーマに考えてみると…
 接客は大きく、①アプローチ、②コミュニケーション、③紹介、④問題共有、⑤最後の一押し、⑥会計時、⑦フォローの7つに分けられます。
さらに、①アプローチは「ご挨拶」「ご案内」「接点の発見」に分けられ、③紹介は「自店紹介」「商品紹介」「自分紹介」に分けられ、⑥会計時は「商品の再アプローチ」「お礼の見える化」「余韻」に分けられます。それぞれについて、考えていくことが大事です。
●売場をテーマに考えてみると…
 売場は大きく、①看板、②入口前、③VMD、④定番売場、⑤レジ前の5つに分けられます。
さらに、②入口前は、「のぼり」「メッセージボード」「壁面」に分けられ、③定番売場は「コーナー案内」「陳列商品」「カテゴリー分け」「ゴールデンゾーン」「POP」に分けられ、⑤レジ前は「陳列商品」「POP」「展開ボリューム」に分けられます。それぞれについて、考えていくことが大事です。

「分かる=分けられる」、「分からない=分けられない」。

「〇〇って、分からないな~」と思う時、多くの場合、〇〇を分けられない時です。逆に、「〇〇のことは、分かる」と思う時、〇〇を分けることができている時です。「“分”かる」と「“分”ける」が、同じ漢字なのはそのためです。

分けることができる店長さん=お客様の喜びを増やし続ける店長さん

 お客様の喜びを増やし続ける店長さんとお話していると、「自分のお店のこと、分かっているな~」と感じます。それが、「この店長さんは、分けて考えることができるんだ」と気がついたのは最近のことです。

4-3.日本人ならではの心理に想いを馳せながら振り返る

日本人マインドの理解が、振り返りを今よりも深い所まで持っていく。

 振り返りがあるレベルに達してくると、こんな場面に遭遇します。
「そもそも、お客様って、どんなこと考えているんだろう?」
「もともと、人の心で大切なことって、どんなことだろう?」
といった、お客様の深い心理がテーマになることがあります。それはそれで盛り上がるのですが、結論めいたことまで行き着きません。そんな時に、終着点へのヒントを与えてくれるのが、「日本人マインド」です。 
「日本人マインド」とはその名の通り、日本人ならではの心理を言います。その日本人の心理を深く知ることで、振り返りが今よりも深い所まで行くことができます。

「日本人マインド」の基本心理、「欧米人マインド」の基本心理

 日本人の心理を深く理解するにあたって、話を分かりやすくするために、欧米人との比較で考えていきます。
欧米人は、個人主義的で自律的な民族特性を持っています。他人との関係において、「あなたと私は対等である=ギブアンドテイク」という基本心理が見えてきます。
 現在多くの小売業で行われているカード販促・クーポンは、商品購入の見返りにポイント還元する、割引をする形で実施されます。これはギブアンドテイクをベースにした活動です。
 一方、日本人は、助け合う、補助しあう民族特性を持っています。他人との関係において、「あなたと私は補完し合う関係である=相互補完関係」という基本心理が見えてきます。東日本大震災の影響で、今後より強く表に出てくるでしょう。

日本人マインドの基本は、8つの心理

 「相互補完関係」をベースに、日本人の心理を眺めてみると、日本人マインドのキーワードが出てきます。「感謝」「祈願」「気遣い」「遠慮」「親近感」「おもてなし」「損得の損」「集団意識」の8つです。
8つの心理を頭に入れておくと、お客様の深い心理が振り返りのテーマになった時も、結論めいた所までいくことができます。そこまでいくと、明日の活動、来月の活動に活かすことができます。
 今でも、多くのお店では、「感謝」はお礼メール、「気遣い」は日頃の接客、「親近感」はフレンドリーな対応、「おもてなし」は固定客への特別な対応で、具体的な形として実践されているでしょう。


 今回は「顧客接点でどのように現場を動かしていくのか」について、①目標設定、②計画作成、③現場実践、④振り返りの4つの場面で、ちょっとした思考の工夫を紹介しました。
 ぜひ今後参考にしていただければと思います。

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