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顧客接点の活動基本4テーマ

顧客接点の活動基本4テーマ

 顧客戦略を進める上で、顧客接点の活動は重要です。
 活動にはいろいろな考え方がありますが、ここでは基本4要素をテーマに
紹介します。①接客、②売場、③ツール、④イベントの4つです。

1.接客

1-0.顧客戦略の視点からの「接客」の問題点

 顧客戦略を成功に導くために「接客」は重要です。顧客とダイレクトに接する接客が一定レベルに達していない店舗で、顧客と継続的な関係を保つことは不可能だからです。  顧客戦略を進める店舗の状況を見ると、顧客戦略導入前と導入後を比べて見ても、大方変化がなく、顧客戦略を導入した後も従来の接客が行われていることがあります。これにはいろいろな理由がありますが、以下2つの点が特に問題です。

問題点1:時間軸を持たない、その場限りの接客

 従来の接客は、顧客との関係をその場限りで考えます。1回の接客でクロージングし、その後はフォローしません。この接客では、顧客戦略の目的である、顧客との継続的な関係づくりは実現できません。
 顧客戦略では1回の接客を「数回・数十回と行われる接客の中の1回、数ヶ月・数年と長いお付き合いをする中でのある場面」と捉えます。「その場限りの接客」ではなく「時間軸を持った接客」が顧客戦略の接客です。  
 短期的な売上拡大を求めると、その場限りの接客から脱却できません。長期的な売上拡大を考えることが改善実現の条件になります。

問題点2:すべての顧客を同じように接客する、一律接客 

 顧客戦略を進める店舗でも、すべての顧客に同じような接客をする「一律接客」が行われていることがあります。新規来店客であっても、固定客であっても、同じように挨拶し、同じように商品紹介し、同じようにクロージングする。この接客は顧客との関係性を踏まえていない接客です。  
 顧客戦略の接客は顧客を区別し、対応を変化させる接客「顧客別接客」であるべきです。顧客を新規来店客・新規購入客・再来店客・固定客・スペシャル顧客に区別し、それぞれの顧客との関係の深さに応じて接客を行うことが重要です。

1-1.お客様に話しかける(アプローチ)

 挨拶の後に話しかける場面について、優秀な店長さん・スタッフさんの何人かにどんな言葉をかけているのか、聞いてみたことがあります。どれも納得がいく内容でしたが、いろいろな意見がありました。業種・業態・立地・お客様によって、話しかけるタイミング、フレーズの内容には、たくさんの正解があるのでしょう。
 ここでは顧客戦略の視点から考えてみましょう。挨拶と同じく、話しかける場面でもお客様を「新しいお客様」「中くらいのお客様」「固定客」の3つに分けて対応を変えることが大事です。まずは、固定客のお客様について考えていきましょう。

「固定客」に話しかける

 固定客は、自分が店舗から大切にされていることを感じたいと思っています。話し掛ける段階で大切にされていると実感いただくのに一番効果があるのは、過去の情報をベースに質問をすることです。大きく3つ形があります。

購入商品についての質問

「先日、買ってくれた洗濯機、調子はいかがですか?」(家電店)

プライベートについての質問

「この前、北海道に旅行に行くと言っていましたよね!北海道、いかがでしたか?」(美容室)

最近の興味についての質問

「最近、秋冬アイテムで気になるモノ、ありましたか?」(アパレルショップ)
 このように、そのお客様ならではの質問を投げかけます。自分、私自身に関心を持ってくれたと感じてもらいます。その会話に流れの中で、最近の流行、新商品について、お話してもいいでしょう。会話の後は自由に楽しく店内を見てもらいます。私が3年通い続けている小料理屋の女将さんは、来店する度に、最近の状況、今日来たメンバーについて質問してくれます。関心を持ってもらえるのは、嬉しいことです。
 時々、気を使い過ぎて固定客とずっとお話しているスタッフさんがいますが、一定の会話(2〜3分くらい)が終ったら、自由に店内を見てもらった方がいいですよ。お客様も自由に見てみたいと思っている人が多いですし、スタッフさんがずっとお話していると次のお客様とお話できるチャンスを失ってしまうことがあるからです。

「中くらいのお客様」に話しかける

 中くらいのお客様(スタッフから見て何となく記憶があるお客様)には、挨拶で「あ、こんにちは!」と覚えていることをアピールした後に、来店へのお礼を丁寧にお伝えします。また来てよかったなあ~とお客様に感じてもらいます。大きく2つ形があります。

お客様について少し覚えている場合

「“先日は”ありがとうございました。確か前回、○○をお探しでしたかね。」

お客様についてあまり記憶がない場合

「“またのご来店”、ありがとうございます。」
 お礼を明確に伝えることで、少しほっとしてもらいます。お礼の後は、最近の流行、新商品について、お話してもいいでしょう。後は自由に楽しく店内を見てもらいます。
 この前、あるアパレルショップに行ったのですが、1週間前のはじめての来店を女性スタッフさんが覚えてくれていて、お礼を言ってくれました。固定客ではないのに、覚えてくれて嬉しかったです。前回悩んで買わなかったシャツを買っちゃいました。

「新しいお客様」に話しかける

 最後に新しいお客様への話しかけ方です。ここが一番難しいです。新しいお客様の情報が何もなく、会話のキッカケをつかむことが難しいからです。そんな中で大事なのは、オリジナリティです。
 お客様は一日で、いくつもの店舗をはしごしている場合があります。オリジナリティのある言葉で印象に残ることで、挨拶と声がけだけの場合も、次回来店に繋がる可能性を高めてみませんか?
 顧客を育てることを目指していても、はじめてのお客様を2回目に導けなければそこで終ってしまいます…。「新しいお客様」にどんな話しをかけるのか、顧客を増やし続ける上で大事です。

挨拶後は、楽しく見てねフレーズ。

「新しいお客様」への挨拶後、10秒後を目安に「楽しく見てねフレーズ」をお届けします。フレーズの内容は一工夫が必要です。「ご自由にご覧ください」はどの店舗でもやっていてオリジナリティがありません。こんな「楽しく見てねフレーズ」はいかがでしょうか?
「どうぞ、売場をゆっくりお楽しみください」
「たっぷり、ゆっくり、ご覧くださいね」
「気になる商品、見つけていただけると嬉しいです」
このタイミングでは、お客様が答えなければならない質問フレーズはまだしない方が安全です。答えてもらえないと、次に話かけづらいからです。

さらに5秒の「そうなんだ〜フレーズ」をお届けします。

「楽しく見てねフレーズ」の後は、「そうなんだ〜フレーズ」をお届けします。タイミングは、「そうなんだ〜フレーズ」の2~3分後、2~3分経たなくても動作として①一つの商品の前に30秒以上いた時(&商品の価格を確認した時)、②同じコーナーに2回立ち寄った時です。

①特定の商品に興味がある様子のお客様に…

◇商品の特徴フレーズ
「この商品はさりげなく、○○ですよね」「この商品の○○、ちょっと気になりますよね」


◇商品の背景フレーズ
「この商品のデザイナーは、○○な場で活躍している人で・・・」


◇プロならではのフレーズ
「一見他店にも同じような商品があるのですが、○○の完成度が断然違います。」


◇お客様を起点としたフレーズ
「昨日、その商品を渋谷系の20代のお客様も買っていきました。」
◇自分エピソードフレーズ
「この前、私もこの商品、買ったんですよね。自宅で使ってみると…」


 ちなみに、自分エピソードフレーズは、最近よく使われていますね。この前、加工食品の雑貨店で、「陶器の容器に入ったレバーパテ」を紹介してくれました。「入荷のたびに買っているので、自宅で空の陶器がたまってしまって…」というエピソードを聞いて、買ってしまいました。おいしかったです!

②特定の商品というよりはコーナーに興味のあるお客様に…

◇コーナーの一番人気フレーズ
「このコーナーに一番の人気商品は、これです。理由は○○だからなんです。」


◇コーナーの業界トレンドフレーズ
「このコーナーは◯◯の新素材が出てきて人気なんです。業界的にも非常に注目されているんです。」
すぐにできるようにならないので、特定の商品(今月の重点商品)をテーマに、スタッフみんなでどんな「そうなんだ〜フレーズ」ができるのか、話合ってみましょう。少しずつ「そうなんだ〜フレーズ」ができる商品を増やしていきましょう。 

話しかける上で大事なココロの状態

 最後に一点、話しかける場面について伝えたいことがあります。話しかける時に、自分のココロの中で、ネガティブな気持ちを持ってアプローチすることは、避けることです。
  ネガティブな気持ちとは、「お客様は接客を受けたくないのでは…」という根本的な疑問をベースにした気持ちのことです。特に若いスタッフに多いです。「自分がお客様だったら、接客を受けたくない」という気持ちに引きずられてしまうからです。
「接客を受けたくない…」、本当にそうでしょうか?正確にいうと、「ムリに勧められる接客、売ろうとする接客、ベタベタする接客」を受けたくないだけではないでしょうか?
顧客を育てる皆さんがお届けしようと思っている接客は、そんな接客ではないですよね。お客様が心地よい、お客様に喜んでもらう、お客様に新しい気づきを与える接客ですよね。それはお客様も望んでいる接客です。
お客様が望んでいることを素直に自分の胸に思い描いて、声の掛けしてみてください。そんな気持ちを持っていれば、話しかけることに躊躇することが少なくなります。大丈夫です!
店舗のスタッフの仕事は、お客様をダイレクトにハッピーにできる素敵な仕事です。

1-2.お客様に商品を紹介する(商品紹介)

これからの時代の商品紹介

 店舗で商品をどのように紹介するかで、大きな転機になった出時事がありました。インターネットです。お客様は店舗に行く前に、店舗に行かなくても、ネットで商品を調べることができるようになりました。
 皆さんは、家電・飲食店・時計・バック・洋服・化粧品を選ぶ時、店舗に行く前にネットで調べていますか?オプトが2014年2月に行った調査によると、「店舗に行く前に、売っている商品をホームページで確認してから行った経験があるか」聞いた所、衣類37%、家電43%、飲食店51%の人が経験があると答えました。これからスマートフォンの拡大でもっと増えるでしょう。
 ネットが一般的に広がる2000年(家庭での常時接続が広がった時期)より前は、スタッフさんにお客様が求めていた商品紹介は、商品の特長を説明してもらうことでした。スタッフは、商品の特徴を覚えて説明できることが一番大事でした。
 もちろん、今でも大事ですが、お客様はネットで商品を調べて、ある程度知っていることが多いでしょう。メーカーのホームページに載っている商品特徴をお客様に伝えていると、お客様からみて時間をかけてわざわざ店舗に出向くメリットが少な目になります。質感・手触り・香り・フィット感等は店舗でじかに商品に触れてみないとわかりませんが、それだけでは1年、3年、5年、10年と同じ店舗にずっと通い続けてくれないでしょう。他店でも確認できるからです。

ネット時代の商品紹介、ネットの商品紹介の限界

 商品の内容をある程度ネットで調べたお客様は、スタッフからどんな商品の紹介を受けたいでしょうか?皆さんが一人のお客様だったら、どんな商品紹介を受けると、「やっぱり店舗に来てよかった!また来ようかな…」と思いますか?
 それは “店舗のスタッフならでは”の商品紹介でしょう。「“店舗のスタッフならでは”=オリジナルな意見」とハードルを上げ過ぎないでください。お客様からみると、「店舗のスタッフ“ならでは”=身近な専門家の意見」です。お客様から見ると店舗のスタッフは親しみやすい、話しかけやすい、身近な専門家です。そんな人ならではの商品紹介を聞きたいと思っています。
 メーカーのホームページに載っている内容は、どうしても商品の長所を強調した説明になります。口コミサイトの内容は、誰だかわからない、しかもシロートであるお客様の意見です。ステルスマーケティング(ステマ)の問題もありました。
商品評価のプロの意見(自動車で言えばプロドライバーの声、化粧品で言えば美容ジャーナリストの意見)は、ちょっと自分とは遠い距離にあります。いくらネットが広がっても、ネットだけではお客様が求めている商品紹介を叶えてくれる訳ではありません。

9つの商品・サービス紹介

 身近な専門家として商品を紹介するといっても、想像が付きづらいと思います。具体的に9つの商品・サービス紹介の切り口をお伝えします。一つの商品について、9つの切り口から2~3個、丁寧に紹介ができれば、ネットで調べたお客様も、店舗に来てよかったと感じてくれます。

①機能・効果の実感

 商品紹介の王道です。機能・効果はパンフレットやホームページに載っているので、店舗では、機能・効果を、スタッフが自分自身で試してみて実際に感じた機能・効果をお伝えすることが大事です。

②物語・ストーリー性

 物語・ストーリー性という観点から、昔からの言い伝えや、開発時・創業時の苦労話等があります。それがない場合は、製造過程を明らかにすることで、モノ自体を語ることで物語・ストーリー性を出すことができます。

③旬・時代のキーワード

 商品は旬・時代のニーズとの繋がりも大事です。節約、○○女子、時短等の旬・時代のキーワードの延長戦上に商品を位置づけます。

④店舗で買ってくれたお客様の声

 「どんなお客様(年齢・雰囲気)が買ったのか?」、「どんな理由で買ったのか?」、「買ってからどんな感想を持っているのか?」等、店舗で買ってくれたお客様の声を紹介します。お客様は同じ立場の地元のお客様の声に耳を傾けてくれることが多いです。

⑤コストパフォーマンス

 お客様が単に価格が安い・高いと判断しないように、値段と価値のバランスを伝えます。

⑥軸とレベルの商品紹介

 お客様は、「商品について詳しく知りたい」 訳ではなく、「後悔する商品選びをしたくない、間違った商品選びをしたくない」 ので、商品スペックの細かい説明ではなく、紹介商品と他商品の違いを明確な「軸」を提示して、その「レベル」をお客様に伝えます。

⑦ブランドの想い・仕入担当の想い伝達

 店舗が商品を仕入れたからには、そこには仕入れ担当者の想いをあり、もちろんブランド/作り手にも想いがあります。そんな想いをお客様に伝えます。

⑧科学的情報の伝達

 科学的というのは、アンケート結果・成分調査といった数値情報で、それを活用したトークが科学的情報伝達トークです。数値・データの接客の強みは、客観的で、一瞬で信頼感を持ってもらえることが特徴で、情報の信頼性が高いです。

⑨潜在的問題解決トーク

 どんな商品を買うときも、購入の障害になるデメリットがあります。そのデメリットについて、積極的に質問してくれるお客様は少ない現実があります。そこで、潜在的に持っている不安に対する解決策を先回りして伝えることで、商品理解を深めてもらいます。

 “店舗のスタッフならでは”商品紹介を積み重ねていくと、お客様の中でこの店舗のスタッフは、「商品の目利きとして、私の商品選択を手伝ってくれる」存在になります。それがずっと通い続けることに繋がっていきます。
 

1-3.顧客情報を活用した接客

 私が店舗ビジネスの固定客創りに最初に興味を持ったのは今から20年前で、25歳の時に関わりはじめた地元の化粧品店でした。私が成功事例の取材でお伺いした、地元の化粧品店には、顧客情報(顧客台帳)を活用した接客が当たり前のように行われていました。
 そこで驚いたのが、使っている顧客情報の中身の濃さでした。お客様の購入した商品の履歴はもちろん、お客様の化粧品の好み、お肌のお悩み、旅行に行く、ペットの名前等のプライベート情報も記録していました。そうしておくとこんな会話を交わすことができます。
(買ってくれた商品情報を切り口に…)
・スタッフさん
「先月購入された、秋・冬のファンデーション、着け心地、いかがでしたか?」
・お客様
「そうね。伸びやすくて、いいわね。ただ、コンシーラーと相性がね…。ちょっと聞いてみていいかしら~。」
(肌のお悩み情報を切り口に…)
・スタッフさん
「去年、“毎年冬になると肌がカサカサになって困っている”おっしゃっていましたが、今年はどうですか??」
・お客様
「そうなのよね。今年もそろそろ、カサカサしはじめたかしら…。どんなお手入れがいいかしらね~。」
(プライベート情報を切り口に…)
・スタッフさん
「先日、日帰りで日光にバス旅行にいくと言っていましたが、いかがでしたか?」
・お客様
「そうそう。その日はお天気が良くてね。お昼に天ぷらを食べたんだけど、それが絶品でね~。それが一番印象に残っているわ(笑)。」
・スタッフさん
「ワンちゃん、お元気ですか?お名前、ミミちゃんでしたよね。」
・お客様
「ミミちゃん、今は元気よ。実は、先週お腹を壊してしまって、大変だったのよ。でも今は全然大丈夫なんだけどね。」
この店舗では、顧客情報を使って接客しています。こんな接客を受けられる店舗は、中々ないですよね。地元で繁盛している化粧品店には、ずっと通い続けるお客様がたくさんいます。

ここまで行き着くための2つの壁

 このような顧客情報を活用した接客を行うためには、2つの壁があります。1つ目の壁は顧客情報を記録しておくこと、2つ目の壁はその情報を使った接客を行うことです。

1つ目の壁は顧客情報を記録しておくこと

 そもそも「顧客情報」とは何でしょうか?店舗・スタッフとお客様が関わったシーンを記録として積み重ねたものです。正直、情報を記録しなくてもできる場合がありますが、安定的にお客様にお届けできません。スタッフ個人の記憶には限界があること、担当スタッフがお休み、休み時間、退職した時に、できなくなってしまうので、記録に残すことは絶対に必要です。
 顧客情報は大きく分けて3つあります。1つ目は名前や住所、メールアドレス等の基本情報、2つ目は購入してくれた商品の内容、3つ目はお客様の好み、お悩み、プライベート情報です。
 ずっと通ってもらうには、3つ目の情報、その記録が大事です。1と2は顧客カードをやっている多くの店舗でも取っているからです。ここではあまり差が出ません。3つ目は、それほど熱心に情報収集していることは少なく、やっていても個人のメモレベルであることが多いです。
 顧客情報の蓄積の仕方は、アナログの顧客台帳パターン(地元の化粧品店はこちらです)、パソコンを使ったデータベースの2つのパターンがあります。

2つ目の壁は顧客情報を使った接客を行うこと

 皆さん、こんな経験ありませんか?
 数年前に、ある百貨店で靴を定期的に購入していました。しかし、毎回「どんな靴をお探しですか?」と新規お客様と同じように接客されます。「何回もこの店で買っているのに・・・」という寂しさが募り、他店で購入するようになっていました。この百貨店はポイントカードで私が何を買っているのか、購入履歴を把握していますが、接客には活かされていません。実際、通い続けませんでした。顧客情報を入手していても、接客に活用していない店舗が意外と多いです。

接客中に顧客情報を使うスーツ屋さん

 あるスーツ専門店では、お客様一人ひとりにお客様カードがあり、それをファイリングしたお客様台帳があります。お客様カードには、住所・名前・連絡先はもちろん、今まで購入したスーツのサイズ・種類・生地の一部が貼り付けてあります。
 この店では、接客中にタイミングよく「以前、当店でスーツを購入されたことありますか」と尋ね、購入したことがあれば名前を尋ねます。名前をキーにお客様台帳からお客様カードを抜き出し、それを見ながら接客します。「毎年お買上いただきありががとうございます。2月に紺のスーツをお買上げいただいたのですね。これから暖かくなりますので、今度は少し明るい色にしてみてはいかがでしょうか」といった接客が行われています。

ポイントカードを実施している店舗では…

 カードを発行している店舗では通常、カードは会計時にスタッフに渡されます。これでは、記憶力抜群の一部のスタッフを除いて、購入履歴を活用した接客はできません。すでに買い物が終わっているからです。いかにして、接客中にカードを掲示いただくかが重要になります。それにはお客様へのお願いトークとタイミングが鍵になります。
トークは「当店のカードをお預かりしても宜しいですか。お客様台帳をお持ちします」と声がけしましょう。タイミングは、お客様が“本日商品を購入しに来た”ことを確認できた時です。その前に実施すると“今日はただ商品を見に来た”場合、お客様にプレッシャーをかけてしまいます。このトークの実践にあたっては、取扱商品・客層によって実施アクションが異なるので個別の検討が必要です。 

 顧客情報を記録しておくこと、顧客情報を使った接客を行うこと、それを実行しているアパレルショップ・雑貨屋・アウトドアショップ・スーツ屋さんがどのくらいあるでしょうか?今実施していないのであれば、実施すればもっとずっと通い続けてくれるお客様を増やすことができます。

2.売場

2-0.顧客戦略の視点からの「売場」の問題点

 顧客戦略の分野でツールについて語られる場合、DM・チラシ・新聞広告・雑誌広告・メール広告等の顧客の手元に届くダイレクトツールが殆どです。売場ツールについてはあまり語られていません。それは店舗を持たないカタログ通販・ネット通販が議論の中心になるからでしょう。
店舗ビジネスにおいて売場の役割は、接客・イベント・販促ツールと同様に重要です。例えば、いくら接客・イベント・販促ツールで、顧客との関係性を深めるアプローチをしても、顧客が店舗に来店し、売場がそのイメージと違っていたらどう感じるでしょうか。戸惑うか、期待を少し裏切った形になってしまうでしょう。現在、顧客戦略を進める店舗の売場には、様々な問題点がありますが、以下3つの点が特に問題です。

問題点1:店舗・売場は目立てば良いと考える

 従来のマーケティングでは、店舗・売場は、派手な色調、奇をてらったデザイン等、目立てば良いと考えがちです。これは来店客・新規顧客の獲得を第一に考え、固定客・スペシャル顧客に顧客を育成する視点があまりなかったからです。
顧客との関係を深める顧客戦略を導入したにも関わらず、売場は従来のまま、アピールしすぎている店舗があります。アピールするのはいいのですが、情報が絞られていないので、“売りたい”オーラが出すぎてしまうのです。顧客戦略を進める店舗の売場は、何度来店しても心地良さを感じる空間になっていることが重要です。この点では、高級品を販売している売場が良い参考になります。

問題点2:人の温度を感じない売場からのメッセージ

 顧客戦略は、顧客との関係を深めていくことが目標です。売場においても顧客とコミュニケーションを深めていきたいというメッセージを顧客に伝える必要があります。
 しかし、多くの店舗ではその意図をあまり感じません。発信メッセージが本部の情報に偏り、顧客が直接関係を作っていく店舗・店長・スタッフからのメッセージではないからです。
この点では、一部のドラッグストア・スーパーマーケットの売場が良い参考になります。

問題点3:最近の顧客購買行動に配慮が足りない

 ここ20~30年に間にファミリーレストラン・CVS等のマニュアル型の応対を基本とするチェーン店が一気に増えました。チェーン店では通常、形式的なコミュニケーションのみ交わされます。現代人は店舗と気軽にコミュニケーションを交わす機会が少なくなっています。
 普段慣れていないので、接客されると“売り込まれるかも知れない”という警戒心が必要以上に強く働いてしまうのです。だからと言って、接客がいやな訳ではなく、スタッフからいろいろ話を聞きたい時があります。
 1人でも多くの顧客とスムーズに接客をしたいなら、接客までワンクッション必要なのです。その役割を担うのが売場です。

2-1.プレゼンテーション売場

 売場は大きく分けて定番売場とプレゼンテーション売場があります。定番売場は商品を通常通りに陳列する売場です。プレゼンテーション売場はグッズ・テーブル等を使って商品を魅力的に演出する売場です。外から見えるショーウインドウ、入ってすぐのスペース、陳列棚のエンドのスペース等があります。
 プレゼンテーション売場は、お客様が来店して目を止めるスペースなのでとても大事です。実はこのスペースの展開がいつも同じだとお客様から見て店舗が変わっていないと、見えてしまいます。プレゼンテーション売場の重要性に気が付いていない店舗がありますが大事です。

プレゼンテーション売場の計画の立て方

STEP1「プレゼンテーション売場を数える」

まずは、自分の店舗のプレゼンテーション売場を把握します。小さい店舗でも、5か所くらいはあるでしょう。5か所なければ、定番売場を削ってスペースを作りましょうね。

STEP2「プレゼンテーション売場を変える頻度を決める」

週に2~3回と来店頻度が多いスーパーマーケット、さらにドラッグストアでは、年間365日を52週、52回に分けて計画をしています。小さい専門店では、毎月1回の来店を想定して、年間12回に分けて計画を立ててみませんか?

STEP3「プレゼンテーション売場の計画表を作成する」

 プレゼンテーション売場の計画は、1シーズン(春・夏・秋・冬)3ヵ月間を1フェーズに、計画立てを行います。具体的にはそれぞれの売場ごとにテーマ、中心商品を考えます。
特にテーマが重要です。テーマがお客様に伝わらないと、お客様がプレゼンテーション売場を見ても、頭が混乱してしまうからです。テーマの切り口は大きく、①季節・天候、②催事・記念日、③ライフスタイル・TPO、③記念日、④ブランド・新商品、⑤キャンペーン・プロモーションがあります。

STEP4「「プレゼンテーション売場を作る」

時期が来たら実際にプレゼンテーション売場を作ります。ここでは使うアイテムと造形が大事です。アイテムは「商品」、「グッズ(小物・敷物等)」、「メッセージPOP」という3つのアイテムを使います。
造形は「三角形(トライアングル)」「繰り返し(リピテーション)」「左右対称(シンメトリー)」のいう3つが基本になります。具体的に、3つの基本をご紹介します。

プレゼンテーション売場で特に大事にしたい「メッセージPOP」

通常のプレゼンテーション売場には、あまり「メッセージPOP」がない場合もありますが、お客様にずっと通い続けて欲しい店舗のプレゼンテーション売場は、イメージで表現するだけではなく、「メッセージPOP」の文字情報を伝えることが大事です。店舗の意図が正確に伝わる人の割合が増えるからです。
店舗は、エリアに住む限られた住民を相手に商売をしています。その限られた中で一定割合の人達を固定客に育てる必要があります。プレゼンテーション売場がイメージだけだと、お客様の理解が一定割合で留まってしまうことがあります。

2-2.話題投げ掛けPOP

 ちょっと考えてみてください。店舗にとって、とても大切な新商品が出たとします。それを売場のボードでアピールしようと思った時に、深く伝えたいと思いすぎて、商品特徴を詳しく、キチンと伝えすぎてしまうことがあります。
 それは間違っている訳ではありませんが、その商品に関心のある人しか、そのボードを読んでくれない可能性があります。元々その商品に関心のない人に興味を持ってもらうことが、数多くのお客様に興味を持ってもらうポイントになります。
 そこで大事なのが、ボードの内容を多くのお客様が関心を持ってもらう内容にすることです。関心を持ってもらうには、お客様に興味のある話題を投げかけることが大切です。それが話題投げかけPOPです。内容は大きく3つあります。

「ポジティブな投げかけ」「ネガティブな投げかけ」

 まずはベーシックな2つを紹介します。「ポジティブな投げかけ」と「ネガティブな投げかけ」です。

ジュエリーショップでの展開
  • ポジティブな投げかけ
    「さあ!思い切って美魔女になってみる?」
  • ネガティブな投げかけ
    「“○○さん、少し老けたかな”なんて思われないように…」
スポーツクラブでの展開
  • ポジティブな投げかけ
    「少しカラダを絞って、ちょいワルオヤジになってみない?」
  • ネガティブな投げかけ
    「お正月太りのカラダ、定着していませんか?」


 実施の際は、ポジティブとネガティブを順番に実施することをおすすめします。いつもポジティブだとパンチがなく、飽きられます。いつもネガティブだとお客様はなにか脅迫されているようで、メッセージに乗りたくない気持ちが芽生えてしまうからです。

「クイズによる投げかけ」

 話題を投げかける切り口で、最近反応がいいのが「クイズ」です。これが3つ目の内容です。
 今、テレビでクイズ番組はどれくらいやっているでしょうか?ものすごい数です。クイズ番組ではなくても番組内でクイズが入っているバラエティ番組も多いです。なぜ、クイズ番組が多いかというと、視聴率が安定しているからでしょう。視聴率が安定しているということは、多くの人の関心を引き付けているからでしょう。ということは、売場でも「クイズ」は多くのお客様の関心を引くことができるのではないでしょうか。
 さらに、クイズは接客に入りやすく、クイズの問題を工夫することで、商品の話に繋がりやすい特徴があります。接客も楽しい雰囲気になります。あるバイクショップさんで、クイズを活用した接客をしているのですが、とてもお客様との距離が近づくとのことです。

ファッション雑貨(財布・靴・バック等)ショップでの展開
  • クイズ①
    「この財布はどうして、約十年も持つと思いますか?」
  • クイズ②
    「この靴はどうして、こんなに値段が抑えられていると思いますか?」
  • クイズ③
    「このバック、どんな時に使って欲しいと、作られたのでしょうか?」

2-3.店内映像配信(大型TV・ミニ液晶TV等)

 店内の売場ツールは、アナログ系のツールが多いので、臨場感/ドキドキ感が足りないことがあります。それを補うのが、店内の映像配信(大型TV・ミニ液晶TV・デジタルフォトフレーム等)です。

誰がメッセージを考えるのか?

店内の映像配信は、タイムリー性/リアル感/親近感が大切なので、店舗の店長/スタッフが情報を考えます。本部からの情報だと全国一律で情報になるので、あまり面白くないことが多いからです。
 そこで問題点があります。店長/スタッフが積極的に取り組んでくれる場合が少ないという現実です。どうして店内で映像配信を実施する必要があるのか、理解いただくことが必要です。そのためにまず、実験展開をしてもらい、効果を実感いただくことがスタートになります。

店内デジタルサイネージの展開事例

 あるスーパーマーケットでは、バイヤーが店内の大型TVで、ある中心商品を訴求した所、実施しなかった店舗に比べて3倍の売上に繋がったそうです。
 例えば、紳士服店では、自社の製法・生地の仕入先を映像で、臨場感を持って訴求しています。また、携帯電話ショップでは、料金相談を訴求していますが、相談の仕方、料金相談をしたお客様の声を映像で訴求することが考えられます。

情報の更新頻度

 情報の更新頻度は、お客様の平均来店頻度で考えます。専門店であれば、月1回程度の場合も多いでしょう。逆に、CVSのような業態では毎週変える必要があります。

3.ツール活用

3-0.顧客戦略の視点からの「ツール」の問題点

 顧客から見ると、企業が顧客戦略を展開しようがしまいが、特別な意味はありません。顧客は商品購入のタイミングで「どの店舗で購入するのが一番良いのか」判断しているだけです。  判断材料として、顧客が重要視しているのがツール(DM・ハガキ・御礼状・メール・ニュースレター・SNS等)です。ツールは「この会社は私(顧客)に対して、どんな気持ちで接しているのか」判断する有効な手がかりになるからです。また、優れたツールは手元に残るので効果も継続します。ツールは顧客戦略展開上、極めて重要です。  現在、顧客戦略を進める店舗のツールには、様々な問題点がありますが、以下3つの点が特に問題です。

問題点1:顧客戦略視点のないツール   

 顧客戦略を進める店舗で、固定客・スペシャル顧客のDMにも関わらず、何の配慮もなく、新規顧客と同じDMをそのまま送付している場合があります。内容を変える、個別の挨拶状を同封する、手書きコメントを添える等の配慮が足りないのです。顧客戦略を進める店舗の販促ツールは、顧客に「“私”を大切に扱ってくれる」「“私”に配慮してくれる」「“私”を特別扱いしてくれる」と感じてもらうことが重要です。  
 また、メーカー提供のカタログ・チラシ等をメインにマーケティング展開している店舗があります。カラー刷りでキレイですが、ハード・機能訴求がメインで顧客との関係性への配慮はありません。商品の詳細説明(細かいスペック等)に使える程度です。顧客戦略を進める店舗では、顧客の琴線に触れる店舗のオリジナルツールをメインにマーケティング展開することが重要です。

問題点2:単体ツールへの過大な期待  

 ツールは理論と違い、実物があるのでわかりやすく、ある特定のツール(ニュースレター・小冊子・DM・メール・SNS等)が一時的にブームになることがあります。しかし、多くの店舗が実施するので反響が落ち、途中でやめてしまいます。そして、また新しいブームが来るとそれに乗るという悪循環サイクルに陥りがちです。  
 単体ツールに過大な期待をかけてはいけません。マーケティングの全体像を捉え、その部品として各ツールの役割を把握し、制作・活用することが大切です。

問題点3:ツールの種類が少ない   

 顧客戦略を推進するには、詳細なマーケティングアクションが必要です。アクションが増えれば、販促ツールの必要場面が増えます。さらに、顧客戦略は顧客別に情報を伝えるので、なおさら種類が必要になります。しかし、多くの顧客戦略を進める店舗は、それほどの販促ツールを用意していません。販促ツールをもっと充実させることが重要です。  
 そのためには、どんなツールがあったら、顧客とのコミュニケーションがもっと深まるか考えます。そしてツールを制作し、現場で使って効果を検証します。ツールを考えるときには、こんな地道な活動が必要です。

3-1.お誕生月・日メッセージ

お誕生“月”レター

 顧客の育成を進めたい店舗では、できる限りお客様一人ひとりの心に触れるコミュニケーションツール届けたいのが本音でしょう。その中で有効なのが記念日をキーにしたアプローチで、真っ先に思いつくのが、お誕生「月」レターです。

お誕生「月」レター内容のポイント

 お誕生月レターは、お誕生日レターと違って販売促進の色を強くするので、来店メリットを整理してダイレクトに訴求します。送付のタイミングは、誕生日の前月下旬にお客様の手元に届くタイミングで行います。

来店誘引の促進策

 来店時に進呈するプレゼントを用意することで、来店を促しましょう。来店いただければ、その場でリアルなコミュニケーションが生まれ、最近のお客様の状況をヒアリングすると共に、店舗の現状等についてお話できるので、関係を深めることができます。

お誕生“日”レター

 カード会員制度を展開している店舗では、通常、入会時に誕生日を書いてもらうので、それをベースに誕生日レター・メールを送っている店舗が多いでしょう。反応がない店舗は聞いたことがありませんが、「思ったほどではないなあ…」という声をよく耳にします。
 そんな時は、店舗さんに、どんな誕生日レター・メールをお客様に届けているのか、見せてもらいます。思ったほどに反応が少ない理由が見えてきます。

反応が少ない誕生日レター・メールは、お得中心の内容

 反応が少ない、誕生日レター・メールの共通点は、お得中心の内容だからです。一方で、反応が良い誕生日レター・メールの共通点は、お得の内容はありつつも、お客様一人ひとりへの想いを伝えていることです。
 そもそも、店舗から日頃の感謝の気持ちを、お客様にとって1年に1度の特別な記念日である誕生日に伝えることで、お互いの関係を深めるのが、誕生日レター・メールをお送りしている意味でしょう。その本来の意味がキチンと表現されている、誕生日レター・メールの反応がいいです。皆さんの店舗が出している誕生日レター・メールは、想いを中心にした内容になっていますか?
全員のお客様に想いを込めたメッセージは難しいと思いますが、固定客には想い中心の誕生日レター・メールを出すことができるでしょう。それが固定客の維持に繋がります。
 こんなお話しをすると、「お得の内容は要らないのかな…」と思う店舗がありますが、お得が悪い訳ではなく、お得が中心になると、モノで釣っているイメージが強くなり反応が低くなります。想いを中心にしつつ、お得もある、これが一番反応がいい誕生日レター・メールです。

想い中心の誕生日レター・メールの作り方

 では、具体的にどのように、想い中心の誕生日レター・メールを作成すればいいのでしょうか?コツがあります。一人ひとりのお客様に、3つの時間軸で想いを馳せて、文章を考えることです。

  • 過去のある場面
    ○○さんと、店舗との出会い、はじめの頃、どんな感じだったかな?
  • 最近のある場面
    ○○さんと一番最近、会ったのって、いつだったかな?どんなお話しをしたかな?
    どんな商品を買ってくれたかな?
  • 未来の場面
    ○○さんと店舗に、これからどんな未来が訪れたらいいかな?

3-2.ご無沙汰アプロ―チ

 ある店舗では、昨年の購入顧客の中で、今年購入した人は6割ほどに留まりました。つまり、4割のお客様が1年の間に店舗から離れてしまったことになります。離れたお客様の中に固定客がいると、売上・収益的にマイナス影響が大きいです。
 固定客の心が店舗から離れた後にアプローチしても遅いので、その兆候が見えた段階でアプローチすることが大切です。固定客維持を狙いとしたツール、それが、ちょっとご無沙汰アプローチです。

実施のポイント

 ご無沙汰アプローチを実施するにあたって、手段・内容・タイミングの3つのポイントがあります。


どんな手段で実施するのか?
 アナログ的手法としてのお手紙、デジタル的手法としてのメールで実施できます。どちらが合っているのか聞かれるのですが、お手紙の方が、手触り感があってよいのですが、コストが掛かってしまいます。メールの方が返信を返しやすいメリットもあります。お客様の年齢の問題もあるので、総合的に判断します。


②どんな内容にするのか?
 内容は、何となく来店が滞っているだけのお客様が大半なので、最近店舗が変わったことを素直にお伝えする、また、購入履歴をベースのお客様個人に向けたメッセージを伝えることが大切です。


③どんなタイミングで実施するのか?
 基本的には、お客様が離れてしまうかも…と認識するのは、全てのお客様の平均来店頻度の3倍(1ヶ月に1度の来店が平均だとすると3ヶ月)以上、来店が滞ったタイミングで実施します。

3-3.SNS

 これからは店舗でも、接客・売場・看板・POP・チラシといったアナログ系アクションに、ネット系アクションを加えることが大事になっています。理由はシンプルで、お客様がネットメディアに触れている時間/場面が年々増えているからです。
 ネット系アクションは、今まで中心だった「ホームページ」「メルマガ」に、「フェイスブック」「ツイッター」「LINE」「ブログ等を加えることで、今よりも情報を届けることができます。それによって、2ヵ月1回来店を1ヵ月に1回来店にする等、来店を促すことができます。

SNSサービスの本質

 フェイスブック・ツイッター・LINE・ブログ等のソーシャルネットワークサービス(SNS)の本質は、「一人の個人が他の誰か(友人・友人の友人)と情報を交換する」ツールです。それが盛り上がり、サイトのアクセス数が増えたことで、広告媒体としての意味が生まれ、利益を生んでいる状態でしょう。
 基本的には、企業・店舗の集客・マーケティングのためのツールではありません。活用にあたってそのSNSサービスの本質を理解して使うことが大事です。結果として集客・マーケティングとしての効果を狙いつつも、ダイレクトな広告表現を発信してしまうと反応・効果が少なくなってしまうのです。

顧客を育てるためのSNSの位置づけ

 店舗との関わりはもちろん、お客様一人ひとりとスタッフ一人ひとりとの関わりが深くなっていくとずっと通い続けてもらう可能性が高くなります。関わりが深くなるとは、お客様とスタッフ、お互いがお互いのことを良く知っていて、ココロを許しあっている状態です。
 その状態になるためには、スタッフが自分のことをお客様によく知ってもらうと、関係を創るまでの時間が短くなります。その手段として使えるツールがSNS(フェイスブック・LINE・ツイッター・ブログ等)です。
 したがって、企業として活動している店舗よりも、個人を中心とした店舗の方が、SNSは相性が良く、使えるツールです。
 もちろん、スタッフが自分のことをお客様によく知ってもらう手段は、SNSだけではなく、接客・名刺(の裏)・スタッフ紹介ボード等でもできますが、多くのお客様にまとめて、随時届けることができるのが、SNSの大きなメリットです。
 では、具体的に顧客を育てる店舗では、SNSでどんな投稿をすればいいのでしょうか?

投稿内容①「スタッフ個人の日常を投稿する」→通常時の来店数アップ

 自分のことを知ってもらうために投稿するのですが、あくまでも仕事を切り口に投稿することが大事です。
 発信する情報の内容は、店舗での出来事(「看板を変えた」「POを付けた」「キャンペーンをはじめた」「こんな商品が出た」「お客様からこんな質問が…」を丁寧に発信していくことが大事です。特別なことである必要はありません。店舗のなにげない日常をベースにします。
情報の黄金バランスは「店舗の価値観/商品の周辺情報3、店舗の商品/販促情報1、プライベート情報1」くらいがいいでしょう。時々、プライベート情報ばかり投稿している人がいますが、仕事内容から個人のキャラクターが垣間見えるくらいが適切なので、注意しましょう。
 更新の頻度は、「ブログ」「フェイスブック」は週に2~3回の投稿、「ツイッター」は1~2日1回のつぶやきが基準になります。
さらに応用として、投稿内容をSNS上の友達・フォロワーに、シェア・リツィートしてもらうことも考えてみましょう。それには、今まで関係がない友達の友達が見て意味がある投稿内容であることが大切です。代表的な「A展開.ためになる情報」、「B展開.写真がキレイ・かわいい」、「C展開.面白い」について、私が関わらせていただいた「写真屋さんの写真付き年賀状の販促」をテーマにお届けします。


★A展開.ためになる情報

「もらって嬉しい年賀状!5つのポイント」「年賀状に使う写真の選び方」等、ためになる情報を投稿する展開です。


★B展開. 写真がキレイ・かわいい
「この写真を年賀状で使う予定です」という投稿で、見惚れる写真(風景)、かわいい写真(動物・赤ちゃん)を投稿する。写真をシェアしてもらう展開です。


★C展開. 面白い
「2人で同時注文のお客様(or3日間限定で30枚以上の年賀状の注文のお客様)に、○○(ネットでちょっと話題の地元ゆるキャラのシール等)をあげちゃいます」等の面白い展開。○○が“ネット上でネタになる”モノであることが必要です。
 といっても、狙って投稿内容をSNS上の友達・フォロワーに、シェア・リツィートしてもらうことは、とても難しい現実があります。そこで、ご提案したいのが、店舗の現場を絡めた展開です。先ほどの「写真屋さんの写真付き年賀状の販促」を例にご提案します。
 店舗でできあがった年賀状をお客様にお渡しするタイミングで、お客様に年賀状ができあがったこと、その感想をお客様ご自身のSNSにアップしてもらい、友達の友達に年賀状の告知を広げてもらう展開です。お客様が投稿しているので、店舗の宣伝色がありません。
 「○○さん、年賀状できあがっています。○○さん、SNSやってますか?
“年賀状ができたこと”“年賀状の出来について”自分のSNSに投稿いただけると嬉しいのですが…。」等お願いをするのです。店舗を応援したい気持ちがあるお客様だったら、OKいただけることも多いと思います。

投稿内容②「イベント・セール告知を段階的に投稿する」→イベントの来店数アップ

 イベント・セールの告知・集客は大きく、「ステップ1事前告知」「ステップ2本格告知」「ステップ3最終告知」の3つに分かれます。3つのステップをベースに段階的に投稿しましょう。

各SNSの特徴

フェイスブック

特定のお客様との関係を深める、その関係性を他の人にアピールするのに適している。

ツイッター

リアルタイム性のある、お知らせ・販促のアピール、口コミの拡散に適している。

LINE

本当に仲が良い人達、特定ニーズの人達グループ

ブログ

自分の専門性、自分のキャラクターを幅広く、アピールするのに適している。HP強化の一環。

4.イベント/販促

4-0.顧客戦略の視点からの「イベント/販促」の問題点

 顧客戦略の目的である、顧客との継続的な関係作りを実現するためには、最適なタイミングで中身の濃い情報を発信することが重要です。そのために、最も有効なマーケティング手段がイベントです。イベントは短期間に多くの顧客にメッセージを発信できるからです。  しかし、多くの顧客戦略を進める店舗のイベントは、短期的な売上獲得を目的に行われているのが現状で、情報発信について意識が薄く、顧客戦略の推進には役立っていません。ではどこが問題なのでしょう。以下の2つの点が特に問題です。

問題点1:ターゲットを絞らない、オールターゲットのイベント  

 顧客戦略の目的は、来店客を新規来店客に、新規来店客を新規購入客に、新規購入客を再購入客に、再購入客を固定客に、固定客をスペシャル顧客に育成することです。したがって、イベントのターゲットも、新規来店客・新規購入客・再購入客・固定客・スペシャル顧客のいずれかになるはずです。しかし、多くの顧客戦略を進める店舗で行われているイベントは、ターゲットを絞り込まず、顧客すべてを対象としています。  ターゲットを絞り込まないと訴求力の高いテーマが設定できず、高い反響が期待できません。顧客戦略を進める店舗のイベントは、ターゲットを絞り込み、そのターゲットとの関係を深める目的で実施すべきです。

問題点2:大雑把な集客アプローチ  

 従来のイベントは、売上に最も大きな影響を与える集客人数がイベント当日になるまでわかりません。集客目標達成に不利な情報があったとしても、「当日にならないとわからないから」という考えが頭をよぎり、対策を講じることもありません。イベント当日「やはり、集客が悪かった」と言っても後の祭りです。   顧客戦略を進める店舗では顧客をデータベースで管理しています。顧客一人ひとりを把握できます。イベント当日までに顧客毎に申込状況を捉え、マーケティング手段を講じることができるのです。

4-1.新規限定プレゼント

 競合他店に通っていてまだ来店したことがないお客様に、新規入会等を条件に魅力的なプレゼントをお届けして、なじみの店舗をスイッチしていただきます。
 魅力的なプレゼントには、以下、5つの方向があります。


①上質性
ほとんどの人が持っている・使っている商品カテゴリーのちょっとした高級品(例えば…高級ハンカチ・高級あぶら取り紙等)。


②希少性
通常の流通では手に入らない商品。(例えば…地域限定のお菓子・店舗限定品等)。


③適時性
購入者が一部の人から一般世帯に普及している過程にある商品(例えば…マイボトル・消せるボールペン等)。


④懐古性
かつて慣れ親しんだモノ、昔を思い出す商品(例えば…懐かしの駄菓子・湯たんぽ等)。


⑤体験性
ある特定のサービス体験の機会の提供(例えば…日帰り温泉券・プチエステ無料券等)。


プレゼントを何にしようか、毎回悩んでいる店舗では、上記5つの基本方向を頭に入れつつ、自分だけで無理に考えるのではなく、ターゲットが購読する一般雑誌を見ると旬のテーマ、旬の商品が分かるので、それをベースに探すのもいいでしょう。毎回同じ、昨年と同じになってしまうことは避けましょう。

4-2.来店ハッピー企画

 ずっと来てもらうことを頭に置いて、イベント企画を考えると、難しく考え過ぎてしまうことがあります。当たり前ですが、お客様は来店にあたって難しく考えていません。ただ、来店すると楽しいから来てくれている、来店が積み重なることで、通い続けていることになっているだけです。10年通ってくれている顧客でも10年間通っている意識はないかも知れませんね。 
 本書では教室イベント、個客イベント、お得イベント等、狙いが明らかなイベントを紹介してきましたが「お客様を育てること、売上のことは考えず、ただ楽しいイベント」を実施することも必要です。良い意味で、お客様の期待を裏切るからです。「この店舗、本当にお客様に楽しんでもらいたいんだなあ~、ビジネス・ビジネスしている店舗が多い中で、面白い存在だなあ~(笑)」と思ってもらえます。ずっと通ってもらうには、そんな余裕・ゆらぎも必要ですね。そんなイベントが来店ハッピーイベントです。
 来店ハッピーイベントは、既存顧客の来店促進はもちろん、新しいお客様の来店、ご無沙汰のお客様の再来店を促し、中長期的で顧客の育成に繋がります。

来店ハッピーイベント、3つの留意点

 来店ハッピーイベントを考える際に、3つの留意点があります。まずこの3つを押さえましょう。
 ①お客様がイベント内容を知った瞬間、”なんか楽しそうだなあ~。店舗に行ってみようかな。友達を誘って一緒に行ってみようかな“と感じる。
 ②商品・サービスと関係がないテーマでOK。
 ③特定の日程に行う企画、1週間~2週間くらい継続して実施する企画、どちらもOK。

具体的な来店ハッピーイベント、7個の切り口

切り口1:来店プレゼント系

 ある地元の家電店では、月1回、産直野菜イベントを10年以上実施して、新しいお客様の獲得に繋げています。お土産お裾分けイベント(先着順限定30個、お土産のお菓子を来店したお客様に1個ずつプレゼント)も面白いですね。

切り口2:無料サービス系

 自動車ディーラーでは、土日限定で女性向けのネイルサービスを実施しる店舗があります。ダイハツではカフェプロジェクトと評して、ケーキ&飲み物をサービスしています。

切り口3:じゃんけん・くじ引き・サイコロでプレゼント系

 来店したお客様がくじ引き・サイコロで当たったら、スタッフとじゃんけんをして勝ったら、プレゼントをあげて楽しんでもらいます。

切り口4:生演奏会系

 東北のある店舗では1年に2回、店舗でフルートの生演奏会を実施しています。地元の音楽教室のメンバーに演奏してもらっています。

切り口5:スタンプラリー系

 愛知県にあるビューティーサロンでは、カラダのチェック、商品のお試し、お手入れサービス、プチレッスン受講、成果発表会の参加等、商品購入を条件としないスタンプラリーを定期的に実施しています。「お客様が以前よりも目的を持って楽しんで来店いただけるようになった」そうです。

切り口6:季節・催事系

 春は「お花祭り」をテーマにお花を一輪店舗に持ってきてもらうとポイント3倍、持ってきてくれたお花は店舗に飾る。夏は「七夕祭り」をテーマに、店舗に短冊を用意して、来店したお客様に願いごとを書いてもらう。「夏祭り」の時期は浴衣で来店するとプチサービスが届ける。「お正月」は絵馬を用意して今年の願いごとを書いてもらう等、季節や催事と絡めてイベントを行います。

切り口7:ゲーム・手品系

 ゲームは、輪投げ、黒ひげ危機一発、ファミリーコンピュー等、懐かしいゲームがおすすめです。妙に盛り上がります。名古屋を中心に展開している手羽先が名物の “世界の山ちゃん”では、お客様が頼むとスタッフが手品をしてくれて、飲み会を盛り上げてくれます。

4-3.ディスカウントイベント

 この前、私とは業界が違うIT企業の方と夕食をご一緒しました。いろいろな気づきをもらったのですが、その中で、こんな話をしてくれました。
「セール、ディスカウントも、エンターテイメント(=人を楽しませるもの)ですよ!」というお話…。頭を上から叩かれたような衝撃を受けました。酔いが一気に冷めました。
 その瞬間まで、私は店舗を「価格訴求のディスカウント系の店舗」と「値引きをしないエンターテイメント系の店舗」に分けていました。2つの店舗は全く違うタイプの店舗だと思っていたのです。確かに違うのですが、セール、ディスカウントをエンターテイメントと考えれば、同じ仲間の店舗ですよね。

私自身もセールで嬉しい気分に!

 自分の購買行動を振り返ってみると、先日スーパーに行った時にいつも100円で売っている納豆が、68円で売っていたので、思わず買いました。32円安かったからというよりは、「納豆、セールなんだ!」と嬉しい気分になり、購入のスイッチが入ったのです。セールもエンターテイメントの一つの形なのは、自分自身の購買行動を振り返れば分かるのに見逃していました。
 店舗の中には値引きを過剰にネガティブに捉える人がいます。そういう店主さんに、「一消費者としてセールで商品を買いますか?」と質問すると「買いますね〜」とおっしゃるんですよね…。
 ただ値引きには、大きな欠点があります。店舗で大切な粗利益を大きく失ってしまう点です。単純に商品の値段を下げただけのセール・ディスカウントは避ける必要があります。顧客を育てる店舗では、3つの方向でセールを実施することが大事です。

①中心商品以外のセール

 中心商品以外の商品、普段は売らない商品に特売価格を設定することが大事です。中心商品で値引きをすると利益を大きく失い、価格競争に巻き込まれます。
 例えば、ファッションバックの店舗が、おしゃれなTシャツをセール販売したり、化粧品店が、おしゃれなストッキングをセール販売します。その商品で儲けを出すのではなく、集客商品として利用します。家具小売チェーンIKEAでは、家具とは直接関係しない、デザインコップ・ぬいぐるみ・キャンドル・ランチ・ソフトクリーム等をセール販売し、集客を促しています。

②セット割引

 家電店では、一人暮らしのお客様に対して、数種類の家電商品(洗濯機・冷蔵庫等)をセット購入できるプランが人気を集めています。一品一品吟味して、購入判断する必要がなく、一度に購入でき、価格も安いので、お客様としてもメリットが大きいのです。店舗としても、1品1品で購入判断されるよりも、効率良く、複数商品を販売することができます。
 アパレルショップであれば、「ジャケット+シャツ+パンツ」をセットで販売することが考えられます。文具店であれば、新社会人向けに「手帳+筆箱+ペン」、インテリアショップであれば「テーブル+イス+TV台」このように様々な展開が考えられます。皆さんの店舗では、どんなセットが考えられるでしょうか?
 スーパーマーケットでもセット割引は広く行われていますね。例えば、チルド飲料・ミニ缶ジュースで行われているのが「選べるドリンク!10本で598円」精肉・鮮魚の分野でも「どれでも好きな3パックを選んで1000円」の展開をしているのをよく目にしますね。

③モニター価格

 ある企業では、年に2回、はじめて商品を購入する方に向けて、人気商品をモニター価格でお届けしています。、商品が返却しなくてもいいのですが、モニターなので、商品を使った感想をもらいます。その意見をマーケティングに活用しています。

セールでエンターテイメントの量を増やす。

 顧客を育て続けるには、エンターテイメントの量が大事です。セール・ディスカウントも使いながら考えてみましょう。お客様は、セール・ディスカウントも好きですからね!

まとめ

顧客戦略を進める上で大事な顧客接点の活動を、①接客、②売場、③ツール、④イベントの4つを切り口に見てきました。各企業ごとに、各店舗ごとに、得意なテーマ、苦手なテーマがあったと思います。例えば「ウチは、顧客戦略の視点で考えると、接客は得意だけど、イベントが苦手かな」等です。
今回紹介した具体的な活動例を参考に、得意なテーマはもっと伸ばす、苦手なテーマは改善にとお役立てください。

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